かつては本が売れなくなった元凶といわれたコミックさえも売れない時代
小学館は5月30日、青年コミック誌「週刊ヤングサンデー」を7月31日発売号、女性コミック誌「Judy」を8月23日発売の10月号をもって休刊すると発表した。「週刊ヤングサンデー」に代わる新たなコンセプトのコミック誌を創刊する予定だという。
また、隔月刊のシニア情報誌「駱駝」は7月10日発売号の発行後、9月発売号を休み、11月発売号からリニューアル新装刊。誌名を「プラチナサライ」に変更し、編集内容および発売日も一新する。
「週刊ヤングサンデー」は、87年4月に隔週刊の青年コミック誌として創刊、95年11月から週刊化された。「1ポンドの福音」(高橋留美子)や「海猿」(佐藤秀峰)、「電車男」(作画:原秀則 原作:中野独人)など、テレビドラマ、映画化された作品も多かった。現在は、離島の医療問題を描きテレビドラマ化もされた「Dr.コトー診療所」(山田貴敏)や詐欺師同士の戦いを描く「クロサギ」(黒丸)などの人気作が連載されている。
連載作品は同社発行の他誌に移籍して継続するという発表があったが、他社に移ってしまう作家や、逆にこれを機会に切られてしまう作家も少なくないのではないか。
発行部数はピーク時の90年が80万部(公称部数)、現在は20万部まで落ち込んでいた。広報室では「読者は自分の好きな作品だけを単行本で読む傾向が強く、それが雑誌の部数の低迷につながった」と話している。
【ヤングサンデー発行部数の推移】
1990年 80万部
1995年 68万部
(2003年以前は公称部数)
2004年 245,417部
2005年 230,479部
2006年 214,878部
2007年 202,541部
コミック誌の場合、本体の販売部数よりも、連載をまとめたコミックスがどれだけ売れるかが採算のカギだとされている。以下にあげた現在の連載や過去の連載を見ると、ヒット作はあるものの、メガヒットと呼べるような作品や何十巻も売れ続けているロングセラー作品もなく、約20万部の発行部数(もちろん実売はもっと少ない)では厳しくなったと想像できる。
ほんと最近は、電車の中で、コミック誌を読んでいるビジネスマンや学生を見なくなった。もちろん本や新聞を読んでいる人も減った。5人中4人がケータイかゲームをいじっているか、ipodを聴いている感じだ。
コミック雑誌とコミックスの売上げによって、雑誌広告や書籍の売り上げのマイナス分を埋めてきた大手出版社は相当、厳しくなっているはずだ。
小学館は5月29日、本社で株主総会を行ったあと、70期決算と役員人事を発表しており、その数字を見ると相当大幅な減収減益決算となっており、必然的に雑誌ラインナップの見直しが図られたのだろう。
【小学館70期の決算】
売上高:1413億4400万円(前年比3.8%減)
営業損失:11億9900万円
経常利益:9億6300万円(同79.4%減)
税引前利益:15億2900万円(同67.0%減)
当期利益:2億9300万円(同86.2%減)
雑誌とコミック誌のお客さんをコンビニに根こそぎ持っていかれ、コミックスの売上げが頼りだった街の書店にとっても、状況はますます厳しくなるばかりだ(売れ筋コミックスも相当コンビニが売っているようだ)。
【ヤングサンデー・現在の掲載作】
(☆マークはテレビドラマ化された作品。★マークはアニメ化された作品。◎マークは映画化された作品)
- アイドルA(不定期連載)(あだち充)2005年36・37合併号〜
- 暁のイージス 闇のイージス 完結編(原作:七月鏡一 作画:藤原芳秀)2007年42号〜
- アオイホノオ(不定期連載)(島本和彦)2007年15号〜
- あんころ。 〜船橋若松1丁目は馬優先〜(万乗大智)2007年39号〜
- イキガミ(不定期連載)(間瀬元朗)◎ 2005年9号〜
- 小田原ドラゴンくえすと!(月刊連載)(小田原ドラゴン)2003年7・8合併号〜
- Odds -オッズ-(石渡治)2006年14号〜
- おやすみプンプン(浅野いにお)2007年15号〜
- CUT 〜活人〜(不定期連載)(むろなが供未)2007年16号〜
- クロサギ(黒丸・原案:夏原武)☆◎ 2003年50号〜
- さくらんぼシンドローム クピドの悪戯II(北崎拓)2006年34号〜
- 事務員A子(不定期連載)(西森博之)2006年14号〜
- 新 青春くん(とがしやすたか)(「青春くん」1989年11号〜)2007年1号〜
- 絶望に効くクスリ(山田玲司)2003年38号〜
- タナトス 〜むしけらの拳〜(原案:竹原慎二 作画:落合裕介)2007年1号〜
- 超無気力戦隊ジャパファイブ(佐藤まさき)2005年49号〜、
- 鉄腕バーディー(ゆうきまさみ)★ 2003年4・5合併号〜
- 逃亡弁護士 成田誠(郄田優・原案:剛英城)2007年20号〜
- Dr.コトー診療所(山田貴敏)☆2000年29号〜
- とめはねっ! 鈴里高校書道部(河合克敏)2007年2号〜
- 都立水商!(原作:室積光 作画:猪熊しのぶ)☆2003年21・22合併号〜
- 花の都(近藤隆史)2007年3・4合併号〜
- ビーチスターズ(森尾正博)2007年14号〜
- プライズハンターGON(不定期連載)(細野不二彦)2001年52号〜
- ほしのふるまち(原秀則)2006年6・7合併号〜
- 魔Qケン(喜国雅彦)2007年30号〜
- まつろはぬもの 〜鬼の渡る古道〜(原作:恒川光太郎「風の古道」 作画:木根ヲサム)2007年21・22合併号〜
- 美晴♥ライジング(大谷じろう)2007年40号〜
- 土竜の唄(高橋のぼる)2005年38号〜
- RAINBOW-二舎六房の七人-(原作:安部譲二 作画:柿崎正澄)2002年51号〜
- リーマン教師 徳川ひかる(不定期連載)(ムロ・ゾノフスキー)2007年5・6合併号〜
- LOST MAN(草場道輝)2008年21・22合併号〜
【ヤングサンデー・過去の連載】
- 1ポンドの福音(高橋留美子)★☆
- 部屋においでよ(原秀則)☆
- 海猿(佐藤秀峰)☆◎
- ANGEL(遊人)★
- お〜い!竜馬(原作:武田鉄矢 作画:小山ゆう)★
- おかわり飯蔵(原作:魚柄仁之助 作画:大谷じろう)☆
- おしゃれ手帖(長尾謙一郎)
- オーバーレブ!(山口かつみ)
- お笑いの神様(原作:ダンカン 作画:松浦聡彦)
- カケル(竹下堅次朗)
- キャプテンどんかべ(大石普人)
- 球魂(岩田やすてる)
- 今日のだいちゃん(太陽星太郎)
- キングスウヰーツ(大石普人 原案・取材:浅妻千映子)
- クピドの悪戯 虹玉(北崎拓)☆
- 月光の囁き(喜国雅彦)◎
- 月明星稀 - さよなら新選組(盛田賢司)
- 殺し屋1(イチ)(山本英夫)◎★
- コンデ・コマ(原作:鍋田吉郎 作画:藤原芳秀)
- 桜通信(遊人)★
- ザ・ワールド・イズ・マイン(新井英樹)
- G(原作:武論尊 作画:原秀則)
- 下北GLORY DAYS(大谷じろう)☆
- 純ブライド(吉田聡)
- 青春くん(とがしやすたか)
- SEX(上條淳士)
- ソラニン(浅野いにお)
- ダービージョッキー(原案:武豊 作画:一色登希彦 構成:工藤晋)
- ちくろ幼稚園(西原理恵子)
- チャイルド★プラネット(竹熊健太郎・永福一成)
- TWIN(六田登)
- デカスロン(山田芳裕)
- 電車男(作画:原秀則 原作:中野独人)☆◎
- 動物性おつゆ(岩谷テンホー)
- なんてっ探偵♥アイドル(作画:北崎拓 原案協力:井上敏樹)
- 日本一の男の魂(喜国雅彦)★1997年26号 - 2007年25号
- のぞき屋(山本英夫)☆
- 新・のぞき屋(山本英夫)
- Bバージン(山田玲司)
- 冬物語(原秀則)◎
- フライ,ダディ,フライ(原作:金城一紀 作画:秋重学)
- マイナス(沖さやか)
- ママ(細野不二彦)
- ムジナ(相原コージ)
- 闇のイージス(原作:七月鏡一 作画:藤原芳秀)
- 愛米(コージィ城倉)
- ルートパラダイス(久米田康治)
- 度胸星(山田芳裕)
- レガッタ〜君といた永遠〜(原秀則)☆
参考:大手3社の青年コミック誌の発行部数
(2007年・全て印刷証明つき部数)
【小学館】
- IKKI:16,000
- ビッグコミック:551,458
- ビッグコミックオリジナル:859,333
- ビッグコミックスピリッツ:373,500
- ビッグコミックスペリオール:305,000
- ヤングサンデー:202,541
【講談社】
【集英社】