売れる雑誌考3:雑誌で儲ける方法・女性誌編


日曜朝放送の「がっちりマンデー」(TBS)は、今儲かっている会社やビジネスを取り上げ、なぜ儲かっているのかをわかりやすく分析・解説してくれる番組だが、12日は「儲かる〇〇限定ファッション誌」という特集だった。


この番組は色々な業界の裏事情がわかり、けっこう参考になるので、人気番組のようで、見れるときはできるだけ見ているのだが、12日は用事があって見逃してしまった。ただ、番組のHPで詳しく内容がアップされており、取り上げた内容はわかるようになっている。


がっちりマンデー(TBS)http://www.tbs.co.jp/gacchiri/


当日、取り上げた雑誌や会社は、


・「ニコラ」(新潮社)=小・中学生限定で成功

・「エクラ」(集英社)=アラフィー限定、通販と連動で成功

・(株)スタートトゥデイ=女性誌12誌と提携、誌面で紹介されたファッションを「ZOZORESORT」というサイトで注文できるようにした。

・「マリア」(アンジュパブリッシング)=大阪のキッズ限定ファッション誌。

・「東海スパイガール」(やまの出版)=東海地方限定販売のファッション誌。


これから生き残れる雑誌のポイントとして、ターゲットを絞り込む、通販などの販売・広告収入以外の収入の柱をつくる、というポイントは、10日のエントリでも触れたように、基本的には賛成なのだが、私のイメージとはちょっと違う部分もある。


「ニコラ」の場合は、読者まだケータイやPCを自由に見れない層で、その親もまだケータイやPCを使いこなしている層ではないので、雑誌には親子で一緒に読めるというメリットがある。


「エクラ」の場合は、50代の読者は当然ケータイやPCのユーザー層ではない上に、今までにもその年代ごとに、雑誌を読んできた層だ。


ターゲットを年齢でくくる雑誌として、成立するとすればこの2つの層しかないとも言えるので、そこを上手にターゲットとしていると思うが、ケータイやPCを使いこなす層が親になり、また50代を迎えるときがくるわけだから、今のやり方がどこまで通用するかだ。


「マリア」もキッズ限定という一見、年齢でくくっているようだが、実際の読者はその年齢の子供を持つ母親である。


これから少子化がすすんでも、この子供を持つ親向けの雑誌、子供と一緒に読める雑誌というのは、例外的に成立する可能性の高いジャンルだと思う。


また「東海スパイガール」が売れているという評判は聞いていたが、これは今、一番元気で、影響力がある名古屋を中心としたエリアだからこそ成功したのであって、単なる地域限定マガジンというのは、地方経済の低迷とともにますます、厳しくなってくると思う。


ちょっと横道にそれるが、関西だけでなく、全国的にも根強いファンも多い「Lマガジン」の休刊のニュースは残念だ。

Lマガジン09年2月号で休刊へ 関西の地域情報誌の草分け
http://mainichi.jp/select/wadai/horidashi/news/20081014mog00m040027000c.html


この機会に、小・中学生向けのティーンズ誌と、その上の女性ヤング誌(死語)の2007年の部数と2006年からの増減部数をを調べてみた。


以下の部数はあくまでも発行部数で、実際に売れた実売部数ではないが、それを踏まえた上で、ある程度の比較はしてもいいだろう。


全体的に部数を減らしている雑誌がほとんどの中で、確かに小・中学生向けのローティーン誌は部数を上乗せするか悪くても横ばいで、数少ない好調なジャンルであることはわかる。


番組では「ニコラ」がこの夏は、実売で16万部に届く勢いと言っていたようだが、これが本当であれば、90%以上の実売(発行部数はさらに増えているかもしれないが)で、書店店頭ではほぼ完売に近い売れ行きだったかもしれない。


また、ローティーン誌はCVSにはあまり配本されないと思うので、15〜20万部という部数を書店中心で販売していくというのも、部数的にもバランスがいいのではないか。


また、女子大生を中心とする20代向けの女性誌は、一時「赤文字雑誌」と呼ばれ、大手出版社の重要な収入源だったが、その低落傾向に歯止めはかかっていなようだ。唯一勝ち組だった「CanCam」でさえも、2006年の実売で70万部前後を誇っていた絶頂期に比べると、現在は50万部にも満たない状況になっていると聞く(部数は未確認)。


この年齢層の女性たちは現在、ケータイやPCのお目当てのファッションサイトに直接アクセスし、その場で直接注文してしまう。参考にするのも、タレントやアーチスト、ショップのカリスマ店員などの個人だったり、ファッションに敏感な友人だったりする。自分が気に入ったブランドの情報もいち早く手に入るので、雑誌がコーディネートして提案するファッションを参考にする層は、大幅に減っていると想像できる。


ところが、この女性誌コミック誌と共に、書店、CVSの雑誌売上げの大きな柱であったわけだから、早急にこれに変わる収入の道を出版社も書店も見つなければならない。


現在、各誌とも豪華な付録をつけることで、一時的な売上げアップを図ろうとしているが、これは一時的な効果にすぎないだろう。


ケータイのサイトではできないコンテンツや、情報提供の方法により、今までにはない切り口の内容で、小部数でも確実に売り切り、利益を確保できる雑誌づくりというのは、今の状況の中では難しいことなのだろうか。


記事のついたファッションや雑貨の通販カタログというのは、ある程度の売上げは見込めるし、成功している例もあるが、通販が主で、雑誌の部分が従という形態では、本屋さんで売る意味があまりないし、ネット利用者がもっと普及すれば、その需要もいつまでも続かないだろう。


ブクマでのコメントで「中古車雑誌」と「ブライダル雑誌」は売れなくても、配本部数が減らないという指摘があったが、分厚いこのテの雑誌は、無料で配ってもいい商品カタログやチラシに値段をつけて売っているのと同じようなものだ。それに書店のスペースを貸すということは、読者が喜んでくれて、利益も出ればいいと考えるか、売れ残ったものを再び配送・返品し、断裁するのも色々な意味でムダがあると思うのだが。


このブログでは今後も、雑誌の可能性や生き残りの方法について、私なりに模索していきたいと思っている。


本と本屋さんの話:雑誌は決して死なない!! 生き残れる雑誌考1
http://d.hatena.ne.jp/dragon8/20081010/1223754958

本と本屋さんの話:売れる雑誌考2・CVSより本屋さんで買える雑誌
http://d.hatena.ne.jp/dragon8/20081012/1223928395


【発行部数一覧】
(左から誌名、出版社、2007年の発行部数、2006年からの増減部数)


●女性ティーンズ誌(小・中学生向け)

  • nicola(新潮社)17万3729部(+5658部)

●女性ティーンズ誌(中・高校生向け)

  • Zipper(祥伝社)17万9083部(−4万2642部)


●女性ヤング誌(ファッション・総合)

  • ViVi(講談社)44万6666部(−7084部)
  • JJ(光文社)29万8591部(−6万5892部)
  • PINKY(集英社)21万部(−833部)

●女性ヤング誌(カジュアル)

  • non・no(集英社)42万7391部(−1万3479部)
  • PS(小学館)24万2666部(+7249部)