本と本屋さんの話:売れる雑誌考2・CVSより本屋さんで買える雑誌


出版ニュース」の10月中旬号に掲載されている「2007年出版物販額の実態と分析」の中で、販売ルートごとの伸び率や構成比が出ている。


この記事によると、2007年の書籍・雑誌実販売額の総計2兆1983億4680円の内訳は、


・書籍: 9746億6435万円(前年比96.6%)・返品率40.3%
・雑誌:1兆2236億8245万円(前年比97.6%)・返品率35.3%


で、構成比は書籍44.3%:雑誌55.7%。


書籍と雑誌実売金額の販売ルートごとの内訳は、


・書店ルート:1兆4503億8900万円(前年比3.7%減)
CVSルート:4044億9100万円(前年比16.6%減)

(ほかに卸売、生協、鉄道弘済会、スタンド販売、輸出、その他のルートがある)


販売ルートごとの構成比を見てみると、


・書店ルート:66.0%(前年比0.6%減)
CVSルート:18.4%(前年比3.0%減)


全ルートの総計では、前年比2.8%減なので、2006年に比べ16.6%減と大幅に下がっているCVSルートの落ち込みというのは、CVS全体の売上げが下がっていると言っても、ひときわ目立つ数字だ(2006年は前年比4.1%減)。


CVSルートの場合、雑誌がほとんどで、文庫などの書籍の割合は3%程度に過ぎない。雑誌の売上げが急激に落ち込んでいるのが、この数字からも納得できる。


CVSの場合、POSデータにより売れない雑誌は即撤退させられ、書店に比べると、より売れ筋アイテムに絞り込み販売しているわけだから、雑誌が売れなくなっているのは確かなようだ(返品率も40%を超えているという)。


一方、全国の書店数は1万6404店(2008年2月末・アルメディア調べ)。

全国のコンビニエンスストア(以下CVS)の店舗数は4万1645店(2008年8月・JFAコンビニエンス統計より)。


この2つのルートだけでも、合わせて5万8049店もになる。
これに、キオスクなどの駅の売店や生協、ネット書店などの販売ルートがある。


仮に6万店に1冊ずつ配本しても最低6万部が必要で、3冊ずつだと18万部、5冊ずつだと30万部が必要になってくる。


実際には、大きな書店には20冊、30冊以上の平積みになる冊数が配本されるわけだから、1冊も配本されない書店やCVSもあるだろうし、2冊とか3冊では店頭でも埋もれてしまったり、仮に売れても追加はできないので、もっと配本されれば売れるだろう機会もみすみす逃してしまっているのではないか。


確かにCVSが増えて、雑誌の配本店数が増えたことによる総体的な販売部数増という、プラス面はあると思うが、それはあくまでも、もともと発行部数が多いファッション誌や女性誌、TV誌などや、CVSの客層と合っている雑誌に限ったことで、このような雑誌にとってはプラスに働き、より売れる結果につながったと思う。


ところが、逆に雑誌が売れなくなってきている状況では、CVSの店舗数がここまで増加したことは、プラス面ばかりではなくなっているのではないだろうか。


また、新たに創刊する雑誌がたとえば10万部〜20万部の発行部数でスタートして、売れ行きの様子を見てみたいと思っても、この店舗数ではもともと行き渡らない。


そこで、取次会社や出版社のほうでも、類似誌の売上げ実績によって、配本数を決め配本するだろうが、あくまでもパターンに沿った配本だと考えられる。


もちろん、全国どんな場所でも売れる雑誌というのはあるだろうが、その売れ行きの差というのは、立地や客層によって相当大きいはずだ。


書店でも売れ行きがよければ、配本数を増やしてもらえるよう取次会社に交渉するだろうし(定期改正)、CVSでも売れ行きのいい店には、配本数を増やすだろうが、それはあくまでも、もともと発行部数が多く、売れている雑誌の場合には可能だが、だんだん部数を減らしている雑誌はますます売れなくなるし、もともと発行部数が少ない雑誌には、客層や立地によるきめ細かい対応はできない。


全国の書店やCVSに発売日までに一斉に配本する(地域により多少差はあるが)日本の雑誌配本システムというのは、世界にも類を見ない優秀なシステムだと言われている。


このような配送・配本システムは、大量販売が可能な雑誌にはメリットがあり、雑誌が総体的に売れていた時代には大きな威力を発揮してきたと思うが、雑誌が売れなくなり、大部数の雑誌が成り立たなくなってきている現在では、その変化に対応できない点も多いはずだ。


前回のエントリで触れた、テーマや読者層を絞り込み、部数も5万部〜10万部程度の確実に売れる雑誌を成功させるためには、この配本店数というのは逆に多すぎるし、今のシステムではきめの細かい配本というのは難しいことが想像できる。


POSデータで管理、機械的に配本するCVSルートよりも、その雑誌の客層や立地に合った書店、さらに中小の書店でも、その雑誌を売りたいと思う書店に配本してもらえれば、その雑誌を読みたいと思う読者に確実に届けられると思うのだが。


雑誌の配本についても、書店の規模や実績による、広くまんべんないバランスのとれた配本ではなく、ある意味いびつな配本、バランスの悪い配本も必要なのではないだろうか。