本と本屋さんの話:雑誌は決して死なない!! 生き残れる雑誌考1


今年に入って、雑誌の廃刊・休刊のニュースが相次ぎ、インターネットの普及などにより、雑誌の未来は明るくないという記事が目立つようになった。


確かに、現在の雑誌全体の売上げは減少を続けていることは確かであるが、廃刊・休刊に追い込まれた雑誌というのは、


1.読者よりクライアントに顔が向いている広告主導型の雑誌(女性誌など)


2.ネットで検索可能な情報を中心にした情報誌


3.単体ではもともと利益が出ていなくても、出版社の看板雑誌(総合誌)であったり、関連書籍の発行で利益が出る雑誌(コミック誌など)で、会社全体の経営的な判断で休刊する雑誌


4.読者層の高齢化により読者が減少し、読者の世代交代に失敗したり、新たな読者を開拓できなかった雑誌(編集部の高齢化や世代交代の失敗も)


などで、ネットの急速な普及により淘汰されるスピードは速まったかもしれないが、遅かれ早かれ、休刊に追い込まれる可能性があった雑誌だと思う(1は編集者がすべてクライアントを意識して編集しているという意味ではなく、ビジネスモデルとして広告に依存している割合が高いという意味)。


休刊の弁で触れられる理由として、ネットの影響というのが一番わかりやすく、周りを納得させれれるものだとは思うが、それは原因の一つにしかすぎない。


屁理屈かもしれないが、厳密に言うと、従来の編集方針および広告戦略や販売方法で売られてきた雑誌では、経営的に維持していくのが難しくなったということで、


雑誌の媒体としての価値がなくなったわけでも、雑誌の読者がいなくなったわけではない(もちろん減少していることは確かだが)。


ネット人口がどんどん増えていったとしても、新たな編集コンセプトを持ち、広告収入に依存しない、そして独自の販売戦略を持った雑誌であれば、ある一定の固定読者を獲得していくことは可能だと思う。


また、ネットで情報は入手できるから雑誌はいらないという層はもともと、そんなに雑誌を買う層ではない。


ネットを活用している層は、逆に必要だと思えば、雑誌や本も多く買う層だと思う。ただ、自分たちが欲しいと思う雑誌がないだけで、ネットでは代替できない雑誌、ネットより雑誌のほうがメリットがあるような雑誌であれば、もっと買うようになるだろう。


年齢や性別、世代などで読者をセグメントしてきた従来のマス雑誌は、価値観がこれだけ多様化し、人と同じではいやだという層が増大し、ケータイのヘビーユーザーの拡大などから、今後20万部とか30万部といった読者を獲得し続けるのは難しいだろう。


そこで、以下にあげる5つを踏まえたビジネスモデルが実現できる雑誌であれば、生き残っていけるだろうし、ネットやケータイの普及とは関係なく、固定読者を獲得することができると思うのだが。


1.広告代理店的なマーケティングからスタートし、広告の取れる 「クライアントに受ける内容」ではなくて、あくまでも読者に顔を向け編集する(クライアントに媚びないことで、結果的に広告が入る雑誌になる)


2.ターゲットやテーマはできるだけ絞込み、部数的には5万部〜10万部の読者を確実に獲得できる内容にする(結果的にそれ以上売れることはあっていいし、マスを狙わないことで、逆にその可能性は高くなる。3〜5万部でも可)


3.ネットでできること、ネットで事足りることはネットで提供し、ネットではできないこと、雑誌ならではのメリットを生かした内容を追求する(雑誌の内容をネットで一部見られるようにするといったネットとの連動というのは方向性が違うと思う。じゃあ具体的にどうすればいいかというのは簡単ではないが、ネットと雑誌の特性がどちらもわかっている編集者がもっと出てくれば、違った展開が可能になると思うのだが)


4.関連書籍やDVDやCD、関連グッズの販売、イベント、セミナーなどの運営などにより、広告収入以外の収入もあらかじめ確保する


5.従来の取次の雑誌の配本パターンに委ねるのではなく、その雑誌に合った販売戦略を立て、それを実行する(出版社が指定配本をもっと簡単にでき、雑誌こそ、完全注文制で買切り、売れ残った雑誌はバックナンバーとして売り、場合によっては値引き販売可にできればいいと思うが)


雑誌の売上げが低迷する理由として、編集面のことがクローズアップされることが多く、広告や販売について言及されることが少ない。特に、5の雑誌の配本や販売戦略については、早急に見直さない限りは、どんな内容の雑誌をつくっても売れる可能性は低いままで、売れる雑誌を生み出すことはできない。


特に、雑誌の売上げの占める割合が高い中小書店にとっては、自店の努力で、確実に売り切ることができる雑誌や販売システムが出現するかどうかが生命線になってくるはずだ(もちろん、雑誌に依存する率が下がってもやっていける店作りをしていく必要はあると思うが)。


この雑誌が売れないと言われる時代に、あえて新雑誌の創刊を発表した幻冬舎がどんな女性誌をつくってくれるのか、楽しみだし、期待したい。


また、マガジンハウスが12月中旬に定期刊行を視野に入れたオヤジ版「ポパイ」を発売する。この雑誌も5万部であれば、十分成り立つのではないか。


幻冬舎、来年3月23日に女性誌「GINGER」を創刊
http://www.shinbunka.co.jp/news2008/10/081002-03.htm

マガジンハウス、12月中旬にオヤジ版「ポパイ」をムックで刊行
http://www.shinbunka.co.jp/news2008/10//081010-04.htm


これまで漠然と思っていたことを、思いつきのレベルで初めて書いたので、知識不足もあり、うまく説明できない部分も多いので、売れる雑誌づくりについては、「こんな本屋さんなら、つい行ってしまう」の連載と並行して、これからも少しずつ勉強しながら書いていきたいと思っている。


ほかにも書きたいテーマやネタが山積みで、仕事が忙しいときにはどうしてもまとまった時間がとれなくて、たまるばかりだが、少しずつ消化していきたい。