「Cawaii!」休刊のニュースが暗示する女性誌の未来


主婦の友社発行の10代ギャル系女性誌Cawaii!』が、5月1日発売の6月号で休刊することがわかった。
主婦の友社によると部数が伸び悩み、今回市場の拡大は困難だと判断したという。

“ギャルブーム”火付け役の雑誌『Cawaii!』が休刊


昨年から雑誌の休刊が相次いでいるので、ニュースとしては、またかという感じで、ケータイとネットの影響による部数減と広告収入の減少が休刊の理由ということで終わってしまうだろう。


しかし、このニュースは今後の女性誌市場の将来、ひいては広告媒体としてのビジュアル誌の今後を考えるけっこう貴重なきっかけになると、個人的には思うので、勝手に考察してみた。


Cawaii!』は平成8年(1996年)に創刊。“読者モデル”として一般の女子高校生をモデルとして起用する読者参加型雑誌の先駆けとして注目され、いわゆるギャル系雑誌としても話題になり、最盛期の2000年には、約40万部の発行部数を誇った、他誌をリードしていくような雑誌だった。


Cawaii!』のここ3年間の発行部数は、

  • 2005.9〜2006.8⇒156,137部
  • 2006.9〜2007.8⇒140,766部
  • 2007.9〜2008.8⇒115,775部(日本雑誌協会・マガジンデータ)

となっており、直近の昨年2008年8月までの発行部数は、3年前に比べ25%近く部数を減らし、約11万5000部になっていた。


この11万5000部という数字は、2007年〜2008年にかけての1年間の平均発行部数なので、後半はもっと少なかったかもしれない。また、昨年9月以降も発行部数を減らしていると考えられ、実際には発行部数で10万部を切っていたのではないだろうか。この部数では、広告が入りにくいティーン向けの雑誌としては相当厳しい収支で、休刊は時間の問題だったことが伺える。


女性誌の年齢別ラインナップの崩壊


また、同誌の出版元である主婦の友社は、その社名からも想像がつくように、女性向けの雑誌や実用的なムックや書籍では多くの実績がある出版社である。この主婦の友社が看板雑誌「主婦の友」を昨年の5月発売の6月号で休刊、91年の歴史に自ら幕を引いたことは大きなニュースになった。それに続くかたちで、今年はかつての人気雑誌『Cawaii!』の休刊を決めたことは、女性向けの雑誌の歴史が大きく転換しようとしていることの1つの現れだと思う。


ちなみに、主婦の友社女性誌のラインナップを見てみると、

  • Hana★chu(ハナチュー)』(中学生向け)⇒128,200部
  • 『Cawaii(カワイイ)』(高校生向け)⇒115,775部
  • 『Ray(レイ)』(10代後半〜20代の女性向け)⇒214,792部
  • 『S Cawaii(エスカワイイ)』(18〜23歳の女性向け)⇒205,409部
  • mina(ミーナ)』(18〜23歳の女性向け)⇒214,792部
  • GISELe(ジゼル)』(28〜32歳の女性向け)⇒78,250部          (部数は2007.9〜2008.8の平均発行部数)

の6誌が発行されている。


ここ3年間の各誌の発行部数を見ると、30万部を超える雑誌はなく、6誌とも部数を徐々に減らしてきているが、部数減少の度合いが『Cawaii!』が一番大きく、採算ラインを大きく下回ってきたために、今回の休刊決定に至ったと考えられる。


また、新潮社の「nicola(ニコラ)」(190,417部=07年9月〜08年8月の平均発行部数)を始め、小学生〜中学生向けの雑誌は雑誌世代の母親が買って、一緒に読んでいる率が高く、今のところ好調だと聞いているので、中学生向けの『Hana★chu(ハナチュー)』は残すことになったと想像できる。


女性誌を発行する出版社の一般的な戦略としては、対象読者をファッション傾向と年齢で切り、年齢を重ねると、1つ上の年齢層向けの雑誌へと誘導するかたちで、基幹誌の対象年齢の下と上に雑誌を創刊させ、読者を囲い込んだり、広告クライアントへも、そのラインナップに沿った営業をしてきたはずだ。


今回「高校生向け」の『Cawaii!』を休刊させることで、主婦の友社女性誌のラインナップは崩れ、3年後、5年後の女性誌のターゲットを持ち上がりではなく、新たに開拓していかなければならない。しかし、女性誌のラインナップを持つ出版社が、ファッション誌の一番の読者層である20代の1つ前である、高校生向けの雑誌を休刊するというのは、主婦の友社の編集・販売戦略が行き詰った結果とはいえ、今後は同社だけの問題では終わらないのではないだろうか。


今回、ティーン向けの雑誌の発行部数を調べていて改めて、驚いたのだが、日本雑誌協会で部数を公表している雑誌のうち、『Cawaii!』と同じ中・高校生をターゲットとした雑誌は集英社の『SEVENTEEN(セブンティーン)』だけになってしまっている。


SEVENTEEN(セブンティーン)』のここ3年間の発行部数は、

  • 2005.9〜2006.8⇒360,476部
  • 2006.9〜2007.8⇒339,047部
  • 2007.9〜2008.8⇒314,445部(日本雑誌協会・マガジンデータ)

となっており、部数は年々減らしているが、売行きは好調と聞いており、30万部を維持している。


そのほか、日本雑誌協会のマガジンデータに部数を公表していないハイティーン向けの雑誌には、『Popteenポップティーン)』(角川春樹事務所)と『KERA!(ケラ)』(インデックス・コミュニケーションズ)がある。


やはりティーンギャル系の『Popteen』は、読者モデルを登場させることで部数を伸ばし、益若つばさで大ブレイクし、40〜50万部を発行した号もあるようだが、現在の発行部数はわからない(最低でも『SEVENTEEN』と同じぐらいの部数は発行していると思うが)。


KERA!』は公称で12万部ということで、『Cawaii!』と同じか、若干少ないぐらいの発行部数かと推測できる。こちらは、ゴスロリパンク系ファッション中心のティーン誌で、付録の通販ブック「アイコレ」で通販を展開しており、マニアックな層をつかんでいるようだ。


今回、いわゆるハイティーン誌と呼ばれる、もともと少なくなってきている高校生向けの雑誌のうち1誌が休刊に追いこまれるということは、今の高校生は雑誌を買って、そこから情報を得るということはしなくなってきた、雑誌でそれをする必要性がなくなってきたと考えていいのだろうか。


ケータイがあれば、ファッション誌はいらない!?


以前はファッション情報といえば、自分の好みのテイストの年齢層にあった女性誌を買い、それをマネしたり、それと同じアイテムを買うという順番だった。


ところが、現在では、ケータイサイトの充実により、メーカーやショップ、通販会社などの商品情報がケータイサイトで直接見れ、そしてその商品を簡単に購入できるようになっている。


だから、出版社の編集部が一生懸命トレンドを探り、人気モデルに新商品を着せ、きれいに撮影したおしつけの情報よりも、109などのカリスマショップに直接行って選んだり、ケータイサイトで直接情報を収集したり、人気モデルのブログをチェックしたり、友だち同士で情報交換したりして、例えば、しまむらユニクロというリーズナブルなショップに行って買ってしまう。


Cawaii!』にもケータイサイトがあり、そこから通販サイトに飛べるようになっており、誌面で紹介したファッションを買えるようにしているが、今後このサイトだけ残して、運営していくという方法もあるだろう。


通販サイトでも、プロのカメラマンとモデルが撮影した写真を使い、コーディネート方法まで指南してくれるので、今後も雑誌の存在価値というのはますます低下していくことは間違いない。


その上、不況で親からもらえるおこずかいも減っている上に、ケータイなどへの出費は増えているわけで、雑誌を買う余裕もないし、買わなくても困らないという状況になっている。


作り手が経験していない時代へどう対応したらいいのか


このケータイを中学時代から使いこなす世代が20代になった段階では、この雑誌を読まない世代、必要としない世代が今以上に多くなってくるわけだから、ファッション誌そのものが必要なくなってくる可能性は否定できない。


雑誌と書籍、コミックなどを出版している大手の総合出版社にとっては、利益構造からいっても、雑誌の広告収入に依存してきた部分が大きい。その一番の収入源であった女性向けのファッション誌が成り立たないということは、その1誌だけの問題ではない。


もう、旧来の雑誌のビジネスモデルのまま、販売部数の減少や広告収入の減収に歯止めをかけるという努力では通用しない、ケータイを持った世代が大人になった時点では、すべて崩壊してしまう恐れがある。


小学生時代から自分のケータイを持ち、メールのやり取りを日常的に行い、ケータイで情報を日常的に検索している世代が今、高校生になろうとしている。


雑誌の作り手の世代が経験していない時代をこれから迎えようとしており、今までの出版の編集方法やビジネスモデルを根底から考え直さなければいけない時期に入ったことを、今回のニュースから読み取れると思うのだが、ちょっと深読みしすぎだろうか。


(おことわり:このエントリは16日付で一度アップしましたが、一部データを加え、書き直したものを、本日再度アップしたものです)


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