こんな本屋さんなら、用がなくてもつい行ってしまう8:昨日のお店とはどこが違っているのかを教えてくれる本屋さん


本屋さんというのは、店を開けていれば自然にお客さんが入ってくる(もちろん立地や品揃えにもよるが)、一般的には、いわゆる集客力の高い業種だと言われてきた。でもそれは、本や雑誌を日常的に買う層がある程度存在していることが前提であり、今後はその数は減ることはあっても、増えることはないだろう。


本屋さんの多くが日々努力している、その地域やそのお店の顧客層に合った品揃えをしっかりしていれば、自然にお客さんはついてくるという時代では、ますますなくなってくる。


本屋さんだから、いらっしゃい、いらっしゃいという呼び込みはそぐわないというイメージはあるが、雑誌の創刊号キャンペーンやハリポタの発売のようなときにやるようなワゴンセールなどの、呼び込み的なものを日常的にもっとやってもいいのではないかと思う。


そのほか、例えば、よくレストランの店先に、手書きのランチメニューや新メニューなどをチョークで書いた黒板や看板をおいているが、本屋さんでも、「話題の新刊本日入荷」とか、人気の雑誌「本日発売。15冊入荷」、品切れ中だったベストセラー「本日再入荷」などの「本日のおすすめ」をこの黒板に書いたり、手書きのポスターや短冊などを店先に吊るしたり、ガラス面に貼ったりするのも、ありなのではないだろうか。


それが目に入れば、目当ての本や用がなくても、ちょっと覗いてみようかと思う人も増えるのではないか。そこで手にとって見るだけ、店内を眺めていくだけで、その日は買わなかったとしても、入る気持ちがなかった人が店に入った意味はあると思う。


本は1日200点以上の新刊が発売され(実際に店頭に並べられるのはもっと少ないとしても)、毎日、雑誌の最新号も発売されており、ある意味では市場から生鮮食品を取り寄せて、並べているようなものだ。


店頭だけでなく、「本日発売の雑誌の目玉付録はこれ」とか、「昨日テレビで紹介された本はこれ」、話題の本や雑誌が「残り○冊限り」など、店内にも割烹料理屋や居酒屋にあるような、「今日のおすすめ」や「今日のおしながき」的なものがあってもいいのではないか。


今日のおすすめ本ということで、その本は割引できればいいと思うのだが、再販制のもとでは、それはできないのでいたしかたないが、関連書籍と合わせたワゴンセール(ミニフェア)とか、特製のしおりや袋などのサービス品の進呈などで、目を引くことはできるかと思う。


書店の店頭はどんな書店であっても、新刊を並べ、新発売の雑誌を店頭に並べていれば、日々変化しているのが当然なのだが、お客さんは、そのことに気づいていないことのほうが多い。


毎日、雑誌を入れ替え、平台の構成や配置も変えていることをもっとアピールして、お客さんにもわかるようにすれば、それだけでもお客さんへの情報提供の1つになるのではないだろうか。


昨日の店頭とはこんなに違っている、今日の店内は昨日の店内とはこんなに違うのだということを、もっとお客さんにもわかるようにしてもらえると、それだけでも来店する目的にもなるし、来店する回数が増えると思う。


手書きのPOPなどで、以上のようなことを実際にやっている書店も多いとは思うし、あまり派手にやると、見た目が美しくないとか、逆にうっとうしいという人もいるかもしれない。


書店員の方々にとっては、品出しと返品作業、棚の整理整頓、レジ業務だけでも手いっぱいで、大変だとは思うが、売上げを上げるということでいえば、本屋さんに行く人が減っているこの状況の中では、書店を注目させ、店内に呼び込むきっかけづくりをもっと派手に、目を引くようにやってもいいのではないかと思う。


ちょっと前に、「本屋さんで入場料をとってはどうか」という議論がネット上で盛り上がっていたが、本屋さんというのは目当ての本や雑誌がなくても、ぶらりと訪れ、ちょっと立ち読みができ、時間つぶしや待ち合わせにも自由に使えるところがいいところだと思う。


目についた本や雑誌をついでに買ったり、偶然立ち読みした本をその日は買わなくても、別な日に買ったりという、一見ムダに見える機会というか時間が長い目で見ると、売上げにつながっているはずだ。


だから、ゆっくり本を選べるからと、お客さんが少ない、静かな本屋さんのほうがいいとも限らないし、立ち読みしているお客さんが多くて、本を選ぶのには邪魔なんだけど、混んでいる活気のある本屋さんのほうに行ってしまうという心理はあると思う。


話はちょっとずれるが、コミックが売れなくなった要因の一つに、すべてシュリンクされて中身が見れなくなったことがあるのではないかという意見がある。シュリンクしないと、立ち読みするだけして、汚されて売りものにならなくなってしまう、売り場がかき回されてしまう、というマイナス要因が多くあることは確かだ。


しかしその一方で、そのコミックを知らない人が、中身を見て気に入って買うという機会を始めから奪ってしまうなど、読者との出会いのチャンスを狭めてしまっている感じがする。


最近では1巻だけ読めたり、一部のページだけ読めるようにしているコミック専門店などもあるが、本当に面白いと思った本やコミックは一度読んだとしても、買って手元に置いておきたいと思うものだと思う(本屋さんにおける立ち読みについてはまた改めて書きたいと思う)。


実際のデータがあるわけではないので、あくまでも漠然とした感想だが、立ち読みしているお客さんが多い本屋さん、用がなくても訪れるお客さんが多い本屋さん、見るだけで買わないで帰っていくお客さんが多い本屋さんのほうが、単純なことかもしれないが、実際に本を買うお客さんが多いのではないかと思うのだが。


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