Cawaii!(カワイイ)休刊とエスクァイア休刊のニュースの波紋


いろいろなサイトでご紹介いただいたこともあり、「Cawaii!(カワイイ)休刊」と「エスクァイア休刊」のエントリには、それまでの30倍以上のアクセスがあり、雑誌休刊に対する関心の高さに改めて驚いている。


私の書いたエントリは、ネット上で検索したデータや、書籍や雑誌誌上ですでに発表されている公式数字やニュースをもとに書いたり、数字を整理し直したりしたもので、業界関係者の生の声を直接聞いているわけではないので、出版業界内の方や当事者の方から見ると、今さらの話だったり、突っ込みが甘いところも多いと思う。


ところが、当ブログのようなエントリにアクセスが多数あるということは、ネット上では思っている以上に、出版界についての情報や数字というのは公表されていないということかもしれない。私自身も、今回ネットで情報を検索してみて、出版界の情報や数字というのはネット上では、あまり公表されていないことを感じた。


18日のエントリでも書いたが、ニュースを発信する側である新聞社や出版社が、自社の事情や業界事情のマイナス面をあからさまに書かないというのも理解できるし、フリーの編集者やライターが自重して書かないのか(一部の業界で書かれている方はいるが)、お金にならない文は書かないということか、文章を書くことに長けている人が多いはずなのに、ほかの業界に比べると、よくも悪くもネット上で情報を発信している人が少ないように感じる(ネットへの対応度もあるかもしれないが)。


その一方で、業界関係者だけでなく、出版とか本とか書店などに関する情報について関心のある人というのが、思っていたよりも多いというのが、このブログをやってみて感じたことだ。


だから、ネットの脅威とか悪影響ばかりを言うのではなくて、出版業界自体(個人も会社も含めて)がネット上でも、もっとオープンに、情報を発信したり、広く問いかけたり、援助のようなものを呼びかけたりしてもいいのではないか。そのことによって、業界内ではどうにもならないことも、ひょんなことから解決し、何かが変わることもあると思うのだが。私自身のことは棚に上げて言うと、ネットに対する出版社を始めとする出版業界としてのアプローチというのは、ネットで実際に情報を発信したり共有したりしている人々からみると、的外れだったり、周回遅れだったりするのかもしれない。


エスクァイア日本版のバックナンバーを買ってきた


昨日は池袋に行く用事があったので、ジュンク堂書店池袋本店で、買おうかなと思っていた、昨年12月発売のエスクァイア日本版09年2月号を買ってきた。


特集のタイトルは「見せたい本棚の作り方。」で、私のような本好き、本屋さんマニアには眺めて楽しい、読んで楽しい特集だった。その前号の1月号も、「指揮者のチカラ。」というクラシック特集だったので、これもどうしようかと思ったが、次回にした(バックナンバーを常備している書店が全国にけっこうあるので、アマゾンで即買わないで、確認してみてください)。


Esquire (エスクァイア) 日本版 2009年 02月号 [雑誌]

Esquire (エスクァイア) 日本版 2009年 02月号 [雑誌]


最新号09年3月号の特集は「サーカスが、街にやってくる!」だが、2008年1年間の特集タイトルを挙げてみる。

  • 08年12月号:美しき日本の山々へ。
  • 08年11月号:ゆえに、カメラを愛す。
  • 08年10月号:SF再読。
  • 08年9月号:最強COOLスイーツを探せ。
  • 08年8月号:天才とスペイン
  • 08年7月号:秘境へ。
  • 08年6月号:実力派の新フレンチ。
  • 08年4月号:日本、ものづくり発見!
  • 08年3月号:ピアノ300年 音楽の真相。
  • 08年2月号:進化する、映画×リアリティ。
  • 08年1月号:京都の味、探訪。

という、ラインナップで、バラエティに富んだ、面白そうな特集が並んでいるが、売行きのほうはその特集によってだいぶ幅がありそうな感じだ。青山ブックセンターやリブロ、パルコ・ブックセンターのような書店が元気があった時代に、そのような書店では、売れる雑誌だったことが想像できる。


今回、エスクァイア日本版の20年間の歴史を調べてみようと思って、ホームページを見てみたが、具体的な変遷には言及していない上に、過去の歴史の部分も見れなくなっていた。また、ネット上でも、詳しい変遷が書かれているようなページはなかった。


創刊当初は季刊でスタートし、売行き好調のため、翌年から月刊化されたが、版元はユー・ピー・ユーという印刷関連の会社で、この会社の若き社長も話題になったと記憶している(追記:UPUはリクルートのような広告制作会社だったようだ)。


古きよきアメリカに憧れがまだあった時代の、音楽、映画、ファッションなどの記事をメインにした、おしゃれで洗練されたカルチャー雑誌で、それまでの雑誌に比べ判型も大きく、ビジュアルのデザインに凝った雑誌の先駆けで、ちょうど、いわゆる団塊の世代やその下の世代がメインの読者だったかと思う。ライバル誌に「GQ」があり、「PLAYBOY日本版」や「PENTHOUSE日本版」のアメリカ発のエンタテインメント誌も元気があった時代だ。


昨年11月に「PLAYBOY日本版」が休刊し、今年はそれに続いて、「エスクァイア日本版」が休刊するとすれば、経済でも文化でも日本の目標だったアメリカが、名実ともにその威信が失墜してきた流れの象徴ともいえるかもしれない。


また、最終頁を見ると、林聖編集長(社長)以下、編集者の名前は11名あり、特集や記事はほとんどライターが書き、豊富な写真もすべて撮りおろしているとすると、本誌もオールカラーでぜいたくなつくりなので、公称の発行部数が6万部(実際はもっと少ないはずだ)だと、広告が入っても定価700円では、相当キツイのではないかと推測できる。


最近の売行きはどうだったのかデータを探してみると、出版業界紙の「新文化」で毎月発表している「ジャンル別ベストマガジン」にその誌名を見つけることができた。


このランキングは毎月、文教堂グループ230店とブックファースト45店の集計結果が出ているのだが、12月発売誌(エスクァイア日本版は2月号)の集計で、男性誌部門の文教堂は掲載されている上位28位までに入っていないが、ブックファーストでは、691部で10位に入っている。


ちなみに1位は「BRUTUS」の1737部で、2位は「DIME」1335部、3位「日経TRENDY」1195部、以下「Tarzan」「サライ」「Bigin」「Pen」「特選街」「おとなの週末」に続く10位となっており、1店あたり平均15冊は売れていたわけで、立地や客層によっては売行きは悪くなかったようだ。


「GLAMOUR(グラマー)」創刊寸前での中止決定の衝撃


また、同じサイゾーウーマンの記事で報じられていた、今夏に創刊が予定されていた雑誌「GLAMOUR(グラマー)」の創刊中止の決定のほうが、業界的にはインパクトがあったかもしれない。


「GLAMOUR」は米国最大の出版社コンデナストが、アメリカをはじめイギリス、フランスなど世界12カ国で発行している雑誌で、アメリカでは約225万部の発行部数を誇っているという。


その日本版を発行することになっていた、コンデナスト・パブリケーションズ・ジャパンは「GLAMOUR」日本版の創刊に向けて、編集長に元「グラマラス」ファッションディレクターの軍地彩弓氏を迎え、プロジェクトを進め、すでに業界向けのパイロット版もつくられていたようだ。


このコンデナスト・パブリケーションズ・ジャパンは男性ファッション誌「GQ JAPAN」と女性ファッション誌「VOGUE NIPPON」を発行しており、社長の斎藤和弘氏は、赤字で休刊寸前だった「ブルータス」を編集長として人気雑誌に仕立て上げ、「カーサ・ブルータス」も成功させ、マガジンハウスを退社するときには大きなニュースなったほど、業界では有名な編集者だ。


この斎藤社長のブログを見ると、

1月13日(火)
お正月休みが終わったのに、また3連休でどうも調子が出ない。といっても年末からマーケットの冷え込みは想像以上。毎日ネガティブな話が入ってくる。こんな状態では、今年中に休刊する雑誌は数え切れないのではないか。ま、日本の雑誌マーケットはタイトル数が多すぎることもあるのだが。

1月16日(金)
午後、新雑誌のレヴァイスをチェックする。編集長の軍地と少々長話。創刊に向けて、着々と進んでいるので安心する。


というエントリでいったん途絶えているが、2月10日のエントリで、

2月10日(火)
午後、インターナショナルの決定で、新雑誌GLAMOURの創刊中止をスタッフに告げる。皆茫然自失。創刊までもう数ヶ月を残すところ、コンテンツをはじめ、発刊準備はほぼ完璧な状態まで来ていたので、言葉にならない喪失感


と、発刊準備が順調にすすんでいた段階での、突然の創刊中止に、スタッフが受けた衝撃の大きさと悔しさが感じられる。


あの斎藤氏が満を持して創刊準備をすすめていた、今年の目玉となるはずだった雑誌の創刊中止の決定というのは、斎藤氏もブログで触れているように、広告業界の冷え込みが、予想以上に厳しいことが伺え、ファッション誌業界およびファッション業界に与えたショックとダメージはかなり大きいといえそうだ。


「出版社別・年齢別の女性誌ラインナップ」と「女性誌のジャンル別の発行部数リスト」を現在製作中なので、近日中にアップしたいと思っている。


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