ケータイ世代が大人になったときの、本と雑誌の世界はどうなる!?


ちょっと前のニュースだが、小学校時代からケータイを使っている「ケータイ世代」が、自分で本や雑誌を買えるような年齢になったとき、本と雑誌の世界はどうなるか、というテーマに一度触れてみたいと思っていたので、この機会にメモしておく。


10代ケータイ依存症…中2の2割、メール1日50通(2月26日・読売新聞)

文部科学省は25日、小中高生の携帯電話に関する初の利用実態調査結果を発表した。


中学2年の約2割が1日に50通以上のメール送受信を行っており、100通以上やりとりする小学生もいた。


入浴中や食事中も携帯電話を手放せない子供もおり、子供の「ケータイ依存」が進んでいることが改めて浮き彫りになった。一方、児童買春に悪用されているプロフ(自己紹介サイト)について約7割の保護者がよく理解していないなど、親が子供を守るための基本的な知識を持ち合わせていないことも分かった。

2月17日のエントリ「Cawaii!」休刊のニュースが暗示する女性誌の未来では、ケータイを小学生のころから使っている子供たちが高校生になりつつある今、ファッション情報をケータイで探し、雑誌は必要なくなるなるかもしれないのでは、ということを書いた。


実際には、女性ファッション誌の数が減り、部数も減少し、市場全体が縮小していくことは避けられないが、雑誌の一覧性や保存性などを考えれば、ファッション誌の市場そのものがなくなることはないと思う。


それよりも、もっと大変なことになると思うのは、ケータイのスゴさや面白さを知ってしまったケータイ世代が、大人になり、自分のお金で本や雑誌を買えるようになったときに、どれだけ本やコミックを買うようになるのか。本やコミックの面白さに触れずに成長したこの世代が、本や雑誌にどれだけのお金を割こうと思うのか、想像すればするほど、本と雑誌の未来はどうなってしまうのかと、勝手に心配してしまう。


今回の記事によると、次のような調査結果が発表されている。

それによると、携帯電話所有率は小6が25%、中2が46%、高2が96%。通話時間は大半が1日10分未満だったが、メールの利用は多く、1日30通以上やりとりする小6が7%、中2が33%、高2が28%だった。


調査は昨年11〜12月、無作為抽出した公立の5000校で小6、中2、高2計1万6893人とその保護者を対象に実施。約6割の親子から回答があった。


携帯サイトを1時間以上利用しているのは、小6が2%、中2が14%、高2が39%。特に高2女子の15%は3時間以上使っていた。


また、食事中に携帯電話を利用する児童生徒も12〜25%、入浴中の利用も3〜17%に上った。高2の場合、授業中に携帯電話を使っている生徒が18%いた。

この数字を見ただけでも、ケータイの普及度や利用時間に驚く大人も多いと思うが、この調査は文科省が行ったものであり、回答率も約6割ということで、実態はもっとすすんでいると考えられる。


私の周りにいる小学生や中学生の話を聞くと、彼らは本当に忙しいらしい。


学校が週休2日制になり、見直しが始まったとはいえ「ゆとり教育」の弊害からか、学校の授業だけでは、希望校への進学は無理だという認識が常識となり、地域や学校によっても差はあるが、ほとんどの生徒が補習塾や進学塾に通っている。親はほかの出費を切り詰めても、子供のために無理をして塾に子供を通わせ、経済的に許せば、スイミングスクールやテニス教室、ピアノなどの習い事に通っている生徒も昔よりは多くなっている。


また、内申書の点数を上げるために、学校の部活動や地域のスポーツチームなどにも参加しており、1週間のうち部活動も塾もない日は1日あるかないかで、最近の小学生、中学生は本当に外で遊ぶ間もないらしい。


そして、帰りは夜遅くなるときもあり、親としてはケータイを持たせることの是非を考える前に、防犯用や連絡用として、ケータイを持たせる親も多い。


塾から家に帰っても、学校の宿題があり、塾の宿題もある。遊びといえば、その合間にテレビを見たり、DSやPSPの携帯ゲームで細切れに遊んだり、友だちとケータイでメールをやりとりすることになる。


まだテレビゲームの時代は、テレビに接続しなければ遊べなかったので、ある程度の歯止めがきいたが、携帯ゲーム機の場合は、電源を入れさえすれば、室内でも屋外でも、どこでも遊べてしまう。これは、子供の遊びとしては良くも悪くも、革命的な出来事だと思う。この携帯ゲーム機が発売された時期の前と後では、子供たちの遊び方だけでなく、友だちとのつき合い方なども、劇的に変わってしまった。


そして、ケータイの登場である。親の世代は当然、子供のころには携帯ゲーム機もケータイもなかった。だから、ゲームの面白さやケータイのすごさも実感としてわからないので、それが子供に与える影響がどれほどのものかも当然わからない。


これほどの時間をケータイに費やし、その上に携帯ゲーム機(ゲームをしない女子はその分ケータイ時間が増える)で遊べば、落ち着いて本を読んだり、マンガを読む時間というのはほとんどなくなってしまう。受験には読書も必要だということで、本好きな生徒は少ない時間でも本を読むこともあるだろうが、ほとんどの生徒はケータイやゲーム、テレビを優先させるはずだ。


私の中学生時代を思い出してみると、野球部に入っていたので、毎日のように遅くまで練習があり、正直なところ、小説などの本はあまり読んでいなかった。しかし、ケータイやゲームはもちろんなかったので、マンガや雑誌はけっこう読んでいた。


親からは「マンガばっかり読んでいないで、たまには本でも読みなさい」と怒られながら、親に隠れてマンガを読んでいた子供時代の経験があったからこそ、大人になってもマンガを読んだり、マンガだけでなく高校からは本も読むようになった。マンガから学んだことも多いし、マンガを読んでいなければ、後になって本も好きになっていなかったかもしれない。


どう考えても、子供にとってはケータイやゲームのほうが面白いだろうし、マンガや雑誌が読めなくても困らないだろう。だから、このままでは、本だけでなく、マンガも読んだことがない。マンガの面白ささえも知らない子供たちが、より増えていくことは目に見えている。


これからの時代、こういったケータイ&ゲーム世代に、本や雑誌、マンガの面白さを実感させることはどんどん難しくなってくるだろう。でも、それを誰かが、どこかでやらなければ、本やマンガがもっと売れなくなるだけでなく、本も雑誌もマンガも読まないで育った子供たちが、どんな大人になるのか、余計なお世話かもしれないが、勝手に心配してしまう。


ケータイや携帯ゲーム機が小さいころからに周りにある子供たちに、本を読む喜び、マンガを読む面白さを、それを知っている世代の親が、そして学校や社会が伝えていかなければならないのではないかと思う。


特に、今のコミックは、ここで言うまでもなく、小説に勝るとも劣らない、テーマ性やストーリー性を持った作品も多くなっている。これを大人だけで楽しむのではなくて、子供たちと一緒に読むことで、その面白さを伝えていくべきなのではないかと思う。


ケータイも問題が多いからと、やみくもに子供から取り上げたり、有害サイトを単純に遮断するだけでなく、ネットとのつき合い方やケータイを通した友達とのつき合い方などを学校でも家庭でも教えていかなければいけないと思うが、そのためには親の世代がもっとネットやケータイの世界を体験し、そのスゴさや怖さを実感していかなければいけないと思う。


「ケータイ&携帯ゲーム世代と読書」「マンガをもっと子供たちに読ませる運動」については、また改めて書きたい。


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