著者のはなしを聴く楽しみ

これもちょっと前の話になるが、不忍ブックストリートにある書店が開催した2つの著者を呼んだトークショーに行ってみた。


一箱古本市week参加企画『読むのが怖い!帰ってきた書評漫才〜激闘編』(ロッキング・オン)刊行記念トークショー(5月5日・往来堂書店)http://www.ohraido.com/index_n.cgi


・出版記念幻燈トークショー『東京サイハテ観光 千駄木ほうろう』(5月17日・古書ほうろう)http://www.yanesen.net/horo/


やなか珈琲店千駄木店の2階を貸しきって行われた1つ目のトークショーには、『読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才〜激闘編』の刊行を記念して、書評家の北上次郎さんと大森望さんが登場。

読むのが怖い!―帰ってきた書評漫才 激闘編


書評漫才という本のサブタイトルの文字通り、ボケとツッコミの書評芸とも言える爆笑トークを展開。ときには鋭く、ときには軽妙に、ふたりの書評の世界に引き込まれ、あっという間の1時間だった。


お二人の文章は読んでいても、実際にお話を聞くのは初めてだったが、トークも予想をはるかに超えて面白かった。


その本への思いや面白さをストレートに熱く語る北上さんに対して、的確にその本の面白さのポイントを押さえて冷静に語る大森さんは、タイプも本の読み方も対照的だが、書評としては絶妙なバランスをつくりあげていて、二人がすすめるなら読んでみようと思わせてしまうトークバトルはまさに「書評芸」とも呼べるものだろう。


新刊の刊行記念とはいえ、おいしいコーヒーと焼き菓子がついて500円とは、申し訳ないようなお得なトークショーだった。


もう1つは、千駄木にある古書ほうろうの店内で行われた『東京サイハテ観光』(交通新聞社)の出版記念イベントで、ライターの中野純さんとカメラマンの中里和人さんが登場。スライド写真をまじえながらの、文字通り幻燈トークショーだった。

東京サイハテ観光


『東京サイハテ観光』は、東京近郊にある身近なサイハテ景を求め歩いた『散歩の達人』での連載『旧道部』をまとめたもので、ライターの中野純さんとカメラマンの中里和人さんが、選景眼(景色を見つける眼力)を磨きつつ、旧道沿いや都心の片隅に眠る名景を発掘した、日本の散歩史に一石を投じる話題の本。


第一部では『サイハテは近くにありて探すもの』と題して、サイハテ景色を巡る中野×中里の視線や想いを、スライド写真をまじえながら語り合い、第二部では、マイクロバス(一泊二日)で巡った房総サイハテツアーの報告会となり、ゲストにバスツアー参加者の渡辺裕之(ライター)さんを招き、旅の写真を見ながら、サイハテ景色の宝庫房総の魅力を語り合った。


静かに淡々と、そして大真面目に、サイハテ景色について熱く語るこちらのお二人も、これもまた絶妙のコンビで、お二人のサイハテワールドに思わず引き込まれてしまった。


古書ほうろうには、一箱古本市で初めて訪れ、雰囲気のいいお店だなと思っていたが、古書の本棚に囲まれたトークショーというのも独特な雰囲気があって、こちらも想像以上によかった。


古書ほうろうのスタッフの方も、集まっている方々も、皆さん本が好きなんだろうなという感じが伝わってきて、著者とその本と出会う場所としては、これ以上のシチュエーションはないかもしれない。


棚に並べるだけでなく、もう一歩踏み込んで本と読者を結びつけてくれる、このようなトークショーやイベントは、本当に有難い。


このようなお店では思わず、すすめられた本以外の本も買ってしまう。