こんな本屋さんなら、用がなくてもつい行ってしまう6:ブックガイドしてくれる本屋さん


ブックガイドしてくれる本屋さんとは、どんな本を読めばいいのか、どんな本を買えばいいのかのヒントや選ぶための情報やきっかけが店内にある本屋さんである。


本をたくさん読む、いわゆる読書家と呼ばれるような人たちは、自分で情報を集め、自分で書店のあたりをつけて探し、なければネット書店で注文したり、古書店ブックオフで買ったりと、「本を探し、選ぶ技術」を持っているし、逆に自分で探すことが楽しみでもある。


ところが、私を含めた読者の大半は、面白い本を読みたいと思っても、これだけ毎日、多くの本が出版されていると、そこからどの本を選び、どう読めばいいのか迷ってしまう。


また、これだけ社会全体の景気が悪くなり、業界を問わず収入は頭打ちか減少し、生活費をあの手この手で節約しているわけだから、大半の人の本に回せるお金というのは減ってきているのは当然で、以前なら新刊書を月10冊買っていた人が月5冊に、月5冊買っていた人が3冊や2冊になり、それ以外はブックオフで買ったり、図書館で借りる頻度も増えているだろう。


好きな本を迷わず買える人はいいのだが、本に回せるお金が少ない中で本を買うのであれば、定価1600円なら1600円分の価値というか、買ってよかった、買って損しなかったと思いたいのは人情である。


そこで、ベストセラーランキングでトップの本であったり、誰か有名人がすすめていた本、テレビ番組で紹介した本、あるいは友達やブログで誰かがすすめていた本、など人それぞれの方法や基準で失敗しない本選びをすることになる。


でも、本屋さんで本を選ぶのならやっぱり、読者に最も近い目線で、かつ今売れている本がわかっている「本屋さんの目」というのが、読者にとっては一番信頼できるというか、最も参考になる情報だと思うのだが。


だから、芥川賞直木賞を取った本より本屋大賞をとった本が売れたり、新聞や雑誌でカリスマ書店員のおすすめ本という企画が多くなるのも当然だ。


ただ、そういった新聞や雑誌、ブログでの情報も当然参考にはなるのだが、自分が行く本屋さんに行ったときに、直接ブックガイドしてもらえると、もっとうれしいだろう。


このブックガイドというのは、コンシェルジェやソムリエのように、例えばこんな本が3000円以内の予算内でほしい、といった要求にも応えられるサービスが究極の理想ではあるが、そこまでは普通は要求しないし、難しいこともわかっている(実際には、まったく情報もないお客さんに付き合って、本を探してくれたり、注文してもらえる本屋さんが大半だと思うが)。


もちろんわからないことを聞いたときに、できるだけ教えてもらいたいとは思うが、会話をかわさなくても、店内を回って、平台や棚を見ていると、自然に買いたい本へと導いてくれたり、本を探すヒントがあるといったガイド機能のようなものがあるといいのではないかと思う(ある一定の法則で、本や雑誌の陳列すること自体がそうであるとも言えるが)。


実際にやっている書店も多いとは思うが、あれば便利だなと思うことをできる、できないは考えないで、思いついたものを勝手に書いてみる。

  • 売れ筋情報付・ジャンル別のランキング=できれば、なんで売れているのか、誰がどの番組で紹介したのか、シリーズの何弾目とか累計〇万部突破、などの客観的な情報がわかるといい。また仮に、品切れで本がなくても、情報としてはあったほうがいいし、いつ入荷予定かがわかれば、ちょっと待ってみようと思うかもしれない。
  • 文庫、新書などの出版社別の目録の常備=自由に見れるようになっているか、自由に持って帰れればなおいい。また、新聞の広告や出版社のチラシでもいいので、その月の新刊の発行予定が見れれば便利だと思う。
  • 新聞広告のコピー閲覧サービス=書評ページのコピーは貼り出している書店も多いが、何万部突破といった数字が入っているような、各紙の新聞広告をまとめて見れたほうが読者にとってはありがたいかもしれない。
  • 各ジャンルやテーマごとに入門書をピックアップ=上級者は自分でほしい本を探せるが、初心者にとってはどの本を読んだらいいかわからないので、例えば、棚の一番左の一角は入門編、という感じで、まずはこの本からという入門書がぱっとわかるといい。
  • 今月のイチオシ・渾身の1冊=各ジャンルごとに、今月は(今週は)、これを読めば損はない、定価分の面白さは保証するといった、店長、担当者おすすめの1冊を。セールスポイントが、POPなどで何冊もわかるのもいいのだが、「だまされたと思って買ってみて」とすすめられたら、思わず買ってしまうし、期待はずれでも、それはそれでうらんだりはしないわけで、また次回に期待、という面白さがある。
  • 今月の作家ピックアップ棚=ブックフェアほどの規模でなくても、この棚1段はその作家や漫画家の作品を、出版社別ではなくて、まとめて見れるといったコーナーがあるといい。もし可能であれば、その作家の著作リスト(年代順になっているとより便利)や新刊案内がもらえれば、次はこれを買おうとか、その資料だけでももらいに行くと思う。
  • 雑誌の発売日早見表=取次会社で配られるような一覧表を貼っている書店は多いが、細かすぎてわかりにくいので、ジャンルや点数を絞った発売日表があれば、次号も忘れずに買いにこようと思う。
  • ブックガイドブック棚=いわゆる本の本と呼ばれる本だけでなく、本がリストアップされたり、あるテーマの本が紹介されているような本や雑誌を一箇所にまとめて、それを見たり、買ったりすることで本選びの参考にできる棚。本特集の雑誌バックナンバーなども、立ち読みできるといい。
  • この本や著者の人脈棚=上のブックガイド棚とも関連するが、ある作家や著者が読んできた本や自分のメンターだと公表している著者や関連書籍をまとめておいてある棚。
  • ネットで自由に検索させてもらえる=以前にも書いたが、PCの端末でネット書店や出版社、作家のHP、書評ブログなどを自由に検索させてもらえると、それだけで行ってみようと思う。また、その本が買えなくても、別の本を買ったり、その場で注文することもできる。


以上のようなことが、ブックガイドとしてどこまで機能するかわからないが、こういった一手間かかったサービスがある本屋さんというのは、お客さんというのは肌で感じるというか、本を買いたいと思っている人には何らかのメッセージが伝わると思う。


そうは言っても、言ったり書いたりするのは簡単で、人手の点からも、店員の経験・知識からも、こういったことはやりたくてもできないという現状はわかるが、お客さんである読者が直接、本を選び、本を買える最良の場所である書店店頭が変わらなければ、本離れ、書店離れに歯止めをかけることはできないと思う。


これは、私が言うまでもなく、本屋さんだけの責任ではなく、出版社、取次会社も一緒に考えていかなければ解決できない問題だ。書店は書店で勝手に努力するしかないと突っぱねても、価格決定権がなく、再販・委託制度に守られた特殊な流通・仕入れ形態であるこの業界では、書店専業で利益を確保していくのは、ますます難しくなってくるだろう。


街の書店がどんどん閉店し、それに代わって新規開店するのは大手書店のチェーン店ばかりで、個人で本屋さんを新規開店しようと思っても、ほとんど無理な状況だと聞く。


「書店員30歳定年説」というのをどこかで聞いたことがあるが、大手書店の店長や管理職クラスであっても、家庭を持ったらやっていくことが難しいような給与水準だとも聞いている。


本屋さんになりたい、本屋さんで働きたいという子供や本屋さんに就職したいという若者がいなくなってきているのを、そのままにしておいては大変なことになると思うのは素人の考えすぎだろうか。


ちょっと話が飛躍してしまったが、本屋さんで働くということについても、今後考えてみたいと思っている。


部外者なのに勝手にえらそうなことを自分でも言っているなと思うが、「本屋さんで本を選び、本を買う喜びを失いたくない」、「本屋さんで本を買うことの面白さを子供たちにも伝えたい」という気持ちにはウソはない。日々懸命に仕事をされている本屋さんには、失礼なことを書いているかもしれないが、読者代表の意見として、少しでも参考にしていただける点があれば幸いです。


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