今年のわめぞは、さらなる大ブレイクの予感


このブログでも柱の陰からウオッチさせていただいている「わめぞ」は、イベントを重ねるごとに、認知度が高まり、わめぞファンの輪も広がり、今や全国にもその名を知られる存在となっている。


光文社の『本が好き!』3月号(2月10日発売)の南陀楼綾繁氏の連載「本町通り(ブックストリート)を歩こう」では、「一騎当千の地域集団『わめぞ』」というタイトルで、わめぞの成り立ちから現在の活動内容やメンバーの紹介まで、これを読めば3分でわめぞのすべてがわかるという感じでまとめられている。


南陀楼氏は個性の強い「わめぞ」のメンバーの方々を評して、

「まるで東映映画の『仁義なき戦い』の登場人物たちのようだ。」と書いている。


確かに、メンバーの方のブログを読んでいると、それぞれが本に関わる仕事をしている日常が生き生きと語られていて、南陀楼氏が書いておられるように、まるで1つの「群像劇」を観ているような気がする。


わめぞのイベントがほかのイベントと違うのは、そのイベントの当日だけでなく、それが終わったあとの打ち上げや、次回のイベントの準備までが、それぞれの日常や視点の中で語られており、それが「わめぞ」のストーリーをつくりあげている。


その結果、登場人物のそれぞれの性格や人柄なども伝わってきて、わめぞに対してより親密感もわいてくる。


わめぞの成功がマスコミでも紹介されることが多いので、それを見て地域振興や町おこしの1つのケースとして、これからも同じようなイベントが開催されることも多いと思うが、わめぞのイベントは一朝一夕でマネができるものではない。


本が好きで、わめぞという地域が好きなメンバーの方たちの1人ひとりが裏方の仕事もこなしながら、ときには広報・宣伝マンになり、その結果、わめぞの輪が広がっていくというストーリーを同時に体験したり、その思いを共有できる「わめぞワールド」は、わめぞという舞台とこの役者たちが揃っていないとできないものだ。


今年は古書往来座前のスペースで行われる本の縁日「外市」が6回、銭湯が1日古本市に変身する「月の湯古本まつり」が2回、さらに「鬼子母神通り商店睦会」とのコラボ「みちくさ市」が3回、開催されるという。


今年も1つひとつのイベントが終わるたびに、わめぞの輪が広がり、大きくなっていくに違いない。イベントが毎月のように行われる2009年が終わったとき、わめぞというキーワードが流行語大賞にノミネートされることも予想できる、大ブレイクの予感がぷんぷんする。今後も柱の陰からウオッチさせていただこうと思っている。


2009年上半期のわめぞのイベントは、


◎第13回 古書往来座外市 〜街かどの古本縁日〜 

◎第3回 月の湯古本まつり 〜銭湯で古本浴!〜

  • 2009年4月4日(土)定休日の銭湯にてズラリ4000冊を販売! 詳細はまもなく更新

◎第1回 鬼子母神通り みちくさ市〜商店街が1日だけの古本街!〜

◎第14回 古書往来座外市 〜街かどの古本縁日〜

  • 2009年5月30日(土)〜31日(日)詳細後日


そのほかにも、わめぞ関連のブックイベントが目白おし。です。


東池袋・日の出おさんぽ市

Pippoの‘古本J君とゆこう’初☆ライブツアー!!

  • 3/21(土)、22(日)BOOKMARK NAGOYA 2009(名古屋)*この二日間古本市が開催され、Pippoさんが3/21にライブ出演・21&22の両日、古本や雑貨&ゲーム等を出展します 詳細はhttp://www.bookmark-ngy.com/

◎ワメトーク vol.4 「エロ漫画の黄金時代(仮)」刊行記念」トークショー 嫌われ者の記場外乱闘篇〜本当は愛されて死にたい奴らの90分1本勝負〜+Pippo の古本J君とゆこうSpring Tour 2009ミニライブ付き

雑誌のはなし:女性誌の未来を勝手に考える1


2月17日のエントリ「Cawaii!」休刊のニュースが暗示する女性誌の未来では、中途半端な知識で、けっこう偉そうな分析や今後の見通しを語りましたが、たくさんのアクセスをいただきましてありがとうございました。一度辞めてしまおうかと思ったこのブログですが、この記事をきっかけに、もう少し続けてみようかと思います。


私自身、雑誌が大好きで、けっこう広いジャンルのものを読んできましたが、一時仕事の関係もあって、女性誌を広く読んでいた時期もあり、女性誌の行く末については、単なるニュース的な意味以上の関心があります。


世界的な不況から始まった急激な景気低迷による広告費の大幅削減の波は、想像以上に大きく、今後もより高く、そして長く続きそうです。昨年の後半から突然押しよせた、津波のような大きな波は、がまんしていれば通り過ぎるようなものではなく、出版社の営業努力とか、編集部の編集努力で食い止めることができる次元の波でもなく、雑誌の編集システムや利益構造および雑誌販売システムまで、思い切った大きな転換を求められるもののようです。


また、書店経営の上でも、「書店にとって雑誌は主食のようなものだ」という言葉があるように、雑誌は欠かせない重要なアイテムであることは言うまでもありません。そして、その中でも、アイテム数も発行部数も多い、女性誌というジャンルの今後というのは、決してあきらめたり、無視できないジャンルだといえます。


そこで、女性誌の過去から現在、そして未来について、限られた知識やデータではありますが、私なりに稚拙な分析や勝手な提案などをしていけたらと思っています。


第1回はまず、年齢別の女性誌のラインナップを持っている出版社別の雑誌リストをつくってみました。今日のところはデータだけですが、それについての傾向と分析は、ジャンル別の動向とも合わせて、少しずつやっていこうと思っています。また、本来であれば、表などで見やすくしたいところですが、私の今の知識では簡単ではないようで、もう少しまとまった段階で、別の方法でのデータご提供ができればと思っています。


今後、「好調なローティーン誌の市場」、「付録を始めとする今までの常識を覆す戦略でただ1社好調な宝島社」「各社が参入する好調パートワーク誌の未来」「今の雑誌が本屋さんでもっと売れるようするためには」などのテーマについては、改めて触れてみたいと思っています。


◎出版社別・女性誌ラインナップ

左から誌名・2007.9-2008.8月の平均発行部数・前年との差・対象読者層の順です。対象読者については、媒体資料やHPを参考にして、対象年齢層をわかりやすく記述したものなので、編集部のいわゆる読者ターゲットの記述とは違う場合がありますので、ご了承下さい。


集英社

  • SEVENTEEN(セブンティーン):314,445(-24,602)=12〜18歳
  • PINKY(ピンキー):196,809(-13,191)=10代後半〜20代
  • non-no(ノンノ):413,479(-13,912)=20代前半
  • MORE(モア):532,500(-23,333)=25・26歳OL
  • SPUR(シュプール):121,667(+1,667)=25〜30歳
  • LEE(リー):306,667(1,667)=20代後半〜30代ミセス
  • BAILA(バイラ):160,834(-2,499)=27〜30歳キャリア
  • eclat(エクラ):66,084=40代〜50代
  • marisol(マリソル):70,000(-40,666)=40代キャリア
  • SPUR LUXE(シュプールリュクス):12,000(-10,000)=30代〜40代セレブ
  • MAQUIA(マキア):110,000(-416)=ビューティ・コスメ                    平均発行部数合計=2,304,485(-125,285)

小学館

  • PS(ピーエス):243,750(+1,084)=16〜22歳
  • CanCam(キャンキャン):570,000(-125,833)=18歳〜20代前半
  • AneCan(アネキャン):255,000(-11,666)=25歳〜30歳
  • Oggi(オッジ):220,584(-12,582)=20代後半〜30代前半
  • Domani(ドマーニ):132,750(-9,583)=30代キャリア
  • Precious(プレシャス):107,334(-4,332)=30代後半〜キャリア
  • 美的(びてき):125,167(-2,750)=ビューティ・コスメ
  • 和樂(わらく):25,925(-1,991)=和を楽しむ女性                      平均発行部数合計=1,680,510(-167,653)

【光文社】

  • JJ(ジェイジェイ):253,684(-44,907)=10代後半〜20代前半
  • CLASSY(クラッシィ):204,175(-5,800)=20代OL
  • VERY(ヴェリィ):229,767(-14,466)=30代女性
  • STORY(ストーリィ):260,167(+8,809)=40歳前後
  • HERS(ハーズ):108,686=50代女性
  • Mart(マート):120,042(+26,334)=30代主婦                        平均発行部数合計=1,176,521(-30,030)

講談社

  • ViVi(ヴィヴィ):441,667(-4,999)=18〜20代前半
  • with(ウイズ):531,684(-16,649)=20代OL
  • Grazia(グラツィア):68,500(-8,916)=30代
  • FRaU(フラウ):85,000(-3,230)=25〜30歳
  • GLAMOROUS(グラマラス)=119,584(-1,249)=20代後半〜30代
  • VoCE(ヴォーチェ):107,500(-2,929)=ビューティ・コスメ                  平均発行部数合計=804,768(-37,972)

【宝島社】

  • CUTiE(キューティ):170,000(16〜22歳)
  • mini(ミミ):180,000(20代前半)
  • steady.(ステディ):120,000(24〜27歳)
  • spring(スプリング):350,000(25〜29歳)
  • sweet(スウィート):460,000(20代後半)
  • InRed(インレッド):320,000(20代後半〜30代)                       公称部数合計=1,600,000                            ※同社の部数はすべて媒体資料発表の公称部数。


Cawaii!」休刊のニュースが暗示する女性誌の未来
http://d.hatena.ne.jp/dragon8/20090217/1234766163

『エスクァイア日本版』休刊が正式発表に


2月24日の日付で、エスクァイアマガジンジャパンのホームページに、次のような正式な休刊のお知らせが掲載された。24日が最新号の発売日にあたっており、それに合わせて正式発表されたと思われる。

エスクァイア日本版』休刊のお知らせ


読者の皆様へ


ライフスタイル・マガジンの先駆けとして1987年に創刊し、以来22年にわたりご愛読いただいてまいりました『エスクァイア日本版』を、2009年5月23日発売号をもちまして、諸般の事情により休刊させていただくこととなりました。

皆様には創刊以来、多大なる御支援を賜りましたことに、この場をお借りしまして改めて御礼申し上げます。

休刊までの3号は、従来にも増して内容に磨きをかけて、永久保存版となるような特大企画を構想中です。変わらずお付き合いいただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。


ちなみに、2月24日発売の2009年4月号の内容は次の通り。


最新号/APR.2009 Vol.23 No.4

もう一度、学校へ行こう

2010年代以降を愉しく生きて行くためには、大人の教養(=リベラルアーツ)を積極的に身につけていく必要があると、エスクァイアは考えます。そこで提案。今こそ、学校へ行ってみませんか?それも、語学やビジネススキルといった実学ではなく、日常では経験できない驚き方や悩み方を誘発してくれる“知の結界”のインサイドへ。今こそ学びを再起動し、さあ、自分の世界の境界線の向こう側へ!

SPECIAL
●学ぶ前に学ぶ、学びを識るための基調講義。●大学王国、アメリカの実力。●ニッポンのリベラルアーツ、最前線。●菊地成孔が指南する、音楽理論という名の教養。●開校! 操上写真学校。●ジャンル別、世界の大学ガイド。ほか

FASHION SPECIAL & FEATURE
●Style in Japan vol.08:“KOBE” 多様な文化が混在する、海と山を抱く街。●the style RALPH LAUREN ●the style GUCCI ●Accessories of Spring & Summer 2009 ●TOKYO BRAVO ほか 

SERIALS / PEOPLE
●パオラ・アントネッリ ほか●マグナムが見た21世紀の光と影 vol.97 鑑賞する者もまた表現の一部となる。●写真家がとらえた、クルマのある風景vol.041 ホンマタカシ×Volkswagen Touareg●プラープダー・ユンのアジアの幻影。●ベストセラーで見るニューヨーク。 ほか 

ART OF LIVING
森本美絵と行く、博物館ワンダーランド/東京おもちゃ美術館●魅惑のメンズケア/グッド・バーを探そう。ただしせっけん。●心地よく美味なる1台/AUDI A6 3.0 THSI QUATTRO ほか 

ESKY
●一冊の本が露呈する現代『月の桂離宮』●作家が語る新作⇔旧作/人気作家が到達した作品の理想/奥田英朗●マエストロに訊け!/チェン・カイコー柳下毅一郎のシネ・ハント『スラムドッグ$ミリオネア』 ほか

COLLABORATION
docomo SMART series 美しく賢いケータイを徹底解剖。●文化・科学の継承を掲げてパネライがスポンサード。ガリレオの天体観測から400年、世界を変えたその偉業をたどる展覧会。●チリ、アルゼンチンの最高峰ワインに出会う旅。ほか  


エスクァイアマガジンジャパン http://www.esquire.co.jp/


同社にはほかに市販の雑誌媒体はないようなので、編集スタッフはどうなってしまうのだろうか。不謹慎かもしれないが、もしかしたら、休刊しないことになった、というニュースが出るかも、と期待していたが、残念。


◎ほんとほんやさんのはなし関連バックナンバー

「エスクァイア」休刊のニュースに想う、雑誌は春のこない「厳冬の時代」に入ってしまったのか!?

Cawaii!(カワイイ)休刊とエスクァイア休刊のニュースの波紋

講談社過去最大の赤字決算から読み取れる出版の未来

このニュースについては、


講談社過去最大の赤字決算〜続々・「出版敗戦」後を構想する必要:海難記http://d.hatena.ne.jp/solar/


◎しがらみもみえてくる 講談社が過去最大の赤字:tx別館(本とネットの話限定) http://d.hatena.ne.jp/urashinjuku/20090224/1235438981


◎気になるニュース・講談社、過去最大の赤字決算に:空想書店 書肆紅屋http://d.hatena.ne.jp/beniya/20090223


で詳しく分析、解説されているので紹介させていただく。いつも参考にさせていただき、ありがとうございます。


かつて出版社売上げトップだった講談社の2007年度の決算が相当深刻な数字になっている。12月以降の今期はさらに厳しい状況であることは間違いない。雑誌の広告収入と、コミック誌およびコミックスの売上げで高い収益を上げてきた同社が直面している状況は、大手の出版社が多かれ少なかれ直面している状況だということは言うまでもない。出版はどこへ行くのか、どうなってしまうのか、この先もっと大きな激震が待っているのか、想像もつかない。


公表されている具体的な決算数字は、


講談社・第70期(H19.12.1〜同20.11.30)】

  • 売上高:1350億5800万円(前年比6.4%減)
  • 営業損失:約62億円
  • 経常損失:約52億円

ジャンル別の内訳は、

  • 雑誌:前年比6.3%減
  • 書籍:同7.9%増
  • 広告:同10.2%減
  • コミック:発表なし

と主要3部門で大幅な減収となり、過去最大の赤字となった。


下の数字が、昨年6月に当ブログの雑誌の休刊・廃刊はもう止まらない!?:講談社07年の決算であげた前期の数字だが、比べると一目瞭然、1年でこんなに変わってしまうものかと驚くほどの、大幅な減収減益決算に陥ったことがわかる。今期の数字が例年のように詳しく発表されていないことも、より深刻な数字であることが伺える。


講談社・第69期(H18.12.1〜同19.11.30)】

  • 売上高:1443億100万円(前年比0.9%減)
  • 営業損失:3億3800万円
  • 経常利益:24億800万円(同25.5%減)

ジャンル別の内訳は、

  • 雑誌:221億円(前年比1.3%減)
  • コミック:664億円(同2.1%減)
  • 書籍:315億円(同5.4%増)

営業ベースで損失計上となったのは4年ぶり。


講談社が発行する主な雑誌の平均発行部数をリストアップしてみた。昨年8月までの1年間の平均発行部数なので、後半はもっと減少し、9月以降も状況から考えればそれ以上に減少しているだろう。


講談社の主な雑誌の平均発行部数(2007.9−2008.8)
 
女性誌

  • 『ViVi(ビビ)』(女性ヤング):441,667(-16,649)
  • 『with(ウイズ)』(女性ヤングアダルト):531,684(-2,929)
  • 『GLAMOROUS(グラマラス)』(女性ヤングアダルト):119,584(-8,916)
  • FRaU(フラウ)』(女性ヤングアダルト):85,000(-4,999)
  • 『Grazia(グラツィア)』(女性ミドルエイジ):68,500(-3,230)
  • VoCE(ヴォーチェ)』(ビューティ・コスメ):107,500(-1,249)

少女コミック誌】

  • 『なかよし』(少女向けコミック):343,750(-56,250)
  • 別冊フレンド』(少女向けコミック):113,417(-26,833)

【女性コミック誌】

  • 『デザート』(女性向けコミック):122,334(-26,999)
  • 『ザ・デザート』(女性向けコミック):128,167
  • 『Kiss(キス)』(女性向けコミック):159,250(-8,350)
  • BE・LOVE(ビーラブ)』(女性向けコミック):185,667(-8,666)

【少年・男性コミック誌・週刊】

  • 週刊少年マガジン』(少年向けコミック):1,773,021(-98,750)
  • マガジンSPECIAL』(少年向けコミック):84,667(-7,083)
  • 『週刊ヤングマガジン』(男性向けコミック):940,817(-40,412)
  • 『モーニング』(男性向けコミック):395,722(-17,578)
  • モーニング2』(男性向けコミック):100,000
  • 『イブニング』(男性向けコミック):179,584(-18,874)

【少年・男性コミック誌・月刊】

【一般誌】

※かっこ内は前年の平均部数との差


部数を増やした雑誌は1誌もなく、コミック誌の減少幅の大きさが目立つ。女性誌は部数はそれほど減少していないが、広告の入稿量の減少幅が大きいと、決算数字から想像できる。
今回、週刊百科のようなパートワーク誌をあげていないが、この部門は好調のようだ。パートワーク誌については、他社も含めて改めて触れてみたいと思っている。「週刊現代」の部数減少も止まらないようだ。

「好きな本を、本屋さんで買えなくなる日」がやって来ないように、今できること


昨日(22日)は、用事があって、東急田園都市線青葉台駅に久しぶりに降りた。


帰り道に気がつくと、駅近くにあった文教堂書店青葉台駅前店の明かりが消え、ガラスには2月15日で閉店したことを知らせる貼り紙が。そういえば、1月の業界紙新文化」で、文教堂書店の閉店計画と希望者退職者のニュースがあったことを思い出した。


記事によると、1月16日の取締役会で、今期の閉店計画を14店舗から32店舗に増やし、100人の希望退職者を募集することを決めたという。


文教堂書店というと、東急田園都市線の溝ノ口本店を皮切りに、東急沿線を中心に神奈川県から関東中心に出店、現在は北海道から奈良県まで、214店(08年8月31日現在・HPによると)を展開、店舗数・売場面積ともに全国の約3%を占める日本最大の書店チェーンに成長した。94年(平成6年)には、店頭市場(現ジャスダック)に株式公開し、その後、首都圏に展開するブックストア談もグループ傘下におく、一時は郊外型書店を積極的に出店して急成長をとげた書店チェーンである。


文教堂青葉台駅前店というと、駅から徒歩1分の好立地にあり、当初は東急線沿線を中心に店舗展開していった同書店の旗艦店のひとつだった店だろう。年中無休だった、その店の明かりが消えているのを見るのは、とても寂しい気持ちがした。


ちなみに、新しくできた駅に隣接しているビルには、ブックファースト青葉台店があり、昨日も多くの来店客で賑わっていた。ブックファーストは昨年の11月6日の新宿店オープンに続き、12月6日には、吉祥寺の弘栄堂書店跡に開店するなど、積極的に店舗展開をすすめる店との明暗を垣間見ることができる光景だった(ブックファーストは、書店地図の要所を押さえ、その立地にあった品揃えと店舗づくりができる、今一番元気な書店として、改めて触れたいと思っている)。


また、小田光雄氏によって毎月更新されている「出版状況クロニクル」では詳細なデータにより、出版流通を巡る最新事情を分析しているが、


◎出版状況クロニクル9(2008年12月26日〜2009年1月25日)http://www.ronso.co.jp/netcontents/chronicle/chronicle.htmlでも、

文教堂GHDは09年8月までに郊外型の不採算店32店を閉鎖し、全従業員の2割に当たる100人の希望退職を募集。


現在の店舗数はホビー用品も含めて175店であるが、02年には225店だったから、今回のリストラも含めれば、この7年間で100店以上が閉店したことになる。文教堂は80年代の郊外型書店の代表格だったが、21世紀型の複合型大書店との競合に対応できなかったと考えていい。それはTSUTAYAやゲオの古い店舗も例外ではないだろう。

と解説されている。


この「出版状況クロニクル」を書かれている小田光雄氏の著者は、今の出版流通を考える上では、一度は目を通すことが必須なテキストのようなもので、私も読ませていただいた。


ほんやまにあの書店巡回日誌−4・小田光雄著“出版状況論三部作”を読むhttp://d.hatena.ne.jp/dragon8/20080617/1213716769


また出版業界においてネット上で、出版について発言、提言している数少ない1人である、仲俣氏の人気ブログ「海難記」で、連続して『「出版敗戦」後を構想する必要』と題した、読み応えのある現状分析と興味深い提言をアップされている。


◎「出版敗戦」後を構想する必要(海難記)http://d.hatena.ne.jp/solar/20090218#p1


昨年12月に開かれた、出版四団体でつくる出版流通改善協議会の再販関連説明会の席上で、書協副理事長であり、筑摩書房・菊池明郎社長が「書店を支援するために、買切り商品の書店マージンを上げて時限再販制を適用してはどうか」。そして「出版社も書店も責任販売の意識をもち、新たなビジネスモデルを構築すべき」と提案した。


今までやろうとしてもできなかった、出版社、取次会社、書店の業界的なコンセンサスを取りつけ、再販制を全廃するのではなくて、それを選択できる部分再販への移行。そして、買切りや時限再販を書籍ごとに自由に選択できる、柔軟性のある流通システムの構築が1日も早く実現することを願っている。


◎新書バブルの崩壊〜続・「出版敗戦」後を構想する必要(海難記)
http://d.hatena.ne.jp/solar/20090220#p1


昨年6月に、「新書市場の拡大と飽和状態は、出版界の縮図のようなもの!?」http://d.hatena.ne.jp/dragon8/20080625/1214409138というエントリを書いたときには、ここまで急激な変化が訪れるとは思っていなかったが、日販の書店売上調査・1月期の新書が対前年比20.8%減、というのは、予想をはるかに超える急激な落ち込み具合だ。


2007年のトップ20(トーハン調べ)の中に新書は、1位に坂東眞理子『女性の品格』(PHP新書)240万部、4位に飯倉晴武編著『日本人のしきたり』(青春新書)89万部が、11位には06年の1位、藤原正彦国家の品格』(新潮新書)261万部、がランクインし、そのほか、岡田斗司夫『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)47万部、や、福岡伸一生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)45万部、早坂隆『世界の日本人ジョーク集』(中公新書ラクレ)74.8万部など、20位中に6作が入っていた。


それに比べて2008年のトップ20には、坂東眞理子『女性の品格』(PHP研究所)72万832部、坂東眞理子『親の品格』(PHP研究所)54万5439部、そして、姜尚中『悩む力』(集英社)39万4103部の3冊しか入っていない(2008/1/7付〜2008/11/24付オリコン調べの推定販売部数)。


「悩む力」の著者、姜尚中氏はテレビのコメンテーターとして人気も高く、その後部数を伸ばし、先週までに累計617,883部になっているが、それでも2007年のトップ3には遠く及ばない。以前なら、売れはじめた本の売行きに加速度をつけることができた全5段や半5段の新聞広告の力も、新聞のパワー低下とともに、その力を失ってきた。


せっかく拡大した新書市場になだれをうって参入した出版社は、その市場を自らの手でコントロールできずに、逆に縮小への道に追い込んだしまったようだ。


新書や文庫は、仲俣氏が提案しているように、雑誌扱いにし、ペーパーバック化して、その上である時期から再販をはずせるようにしてはどうかという案には賛成である。ただ、その一方でロングセラーとしても売れる基本書籍的なラインナップについては、従来の「教養新書」的なシリーズや古典的なシリーズなど、別なかたちですみわけできるといいと思う(この場合、1冊あたりの定価は上げてもいいかと思う)。


売れ筋の新書のラインナップを揃えるために、以前なら刊行を見合わせたような内容の新書を刊行したり、1冊売れた作家や書き手に、短期間での執筆を強いて刊行したりすることは、自分で自分の首をしめるようなもので、従来の編集スタイル、刊行サイクルというのを取り戻すべきだと思う。


ところが、出版社の事情として、自社だけそのゴールなきレースに乗り遅れるわけにはいかない事情がある。


それは、ここで指摘するまでもない、再販、委託制のもとでは、その本が利益を出せるかどうかの結果はすぐ出ない。その結果が出るまでに、言ってみれば「出してみなきゃわからない、一発当たればチャラになる」ようなベストセラーがいつか出ることを目指して、売れそうな本をできるだけ多く市場に出し続ける、自転車操業を続けるしかない。


再販、委託制度の見直しによって、業界内のルールを変え、横並びで「いっせいのせい」で止めなければ、この自転車操業は止められない。しかしその一方で、急に止めたときの痛みというのは当然あるわけで、それに耐えていけるだけの力があるかどうかは、本当の意味での出版社の総合力が試されることになるだろう。


また、仲俣氏が提案する、公共図書館を出版再生のひとつのツールとして、地域の書店と組み合わせて、もっと積極的に活用していくことや、公共図書館での本の販売など、検討していく意義があるアイデアだと思うが、今の仕組みの中では、誰が旗を振って、どこへどう導いていくのかという難問は多いだろう。


そこで、仲俣氏がいうところの、

いずれにしても、公共セクションがなんらかのかたちで本の流通プロセスにかかわれる仕組みをつくらないと、いまのままでは書店も出版社も、ただただ苦しくなっていくばかりだと思う。ことに地方の書店の疲弊は深刻なのではないか。出版界にこそ、いまは一種の「ニューディール政策」が必要なのだと思う

という意見にいきつくのは、私も同感である。


しかし、業界的なルールの改正や流通システムの変更というのは、買切り制ひとつ取っても、個々の商品で実験はしてみるものの、その後、それが広がっていかなかったように、今の話し合いのメンバーでは、相当時間がかることは目に見えている。今の書籍協会とか雑誌協会とか、取次協会や日書連という大きな団体を超えた論議が盛り上がることを期待したい。


その一方で、そのような業界的な変革が現実に始まるまでは、個々の書店は今のシステムの中でいかに、売上げを落とさず、新たな客を呼び込むための努力をしていくしかない。


私のような一読者であり、一顧客の立場としては、仲俣氏も言うように、できるだけ近くの書店を始めとするリアル書店で本や雑誌を買うこと。そして、その本の面白さや、本を読むことの素晴らしさ、そして、本屋さんで本を選び、買うことの楽しさを、微力ながら広く伝えていくしかないと思っている。


オリノコ河水源の探検:紀伊國屋書店の出版流通に対する見解http://bookstore.g.hatena.ne.jp/worris/20090214/1234635214


2010年新卒採用ページの会社要綱に載っている文章で、出版の現状を知るためのわかりやすい解説になっているが、オリノコ河水源の探検さんがコメントしているように、意見的な要素も入っているところが面白い。

Cawaii!(カワイイ)休刊とエスクァイア休刊のニュースの波紋


いろいろなサイトでご紹介いただいたこともあり、「Cawaii!(カワイイ)休刊」と「エスクァイア休刊」のエントリには、それまでの30倍以上のアクセスがあり、雑誌休刊に対する関心の高さに改めて驚いている。


私の書いたエントリは、ネット上で検索したデータや、書籍や雑誌誌上ですでに発表されている公式数字やニュースをもとに書いたり、数字を整理し直したりしたもので、業界関係者の生の声を直接聞いているわけではないので、出版業界内の方や当事者の方から見ると、今さらの話だったり、突っ込みが甘いところも多いと思う。


ところが、当ブログのようなエントリにアクセスが多数あるということは、ネット上では思っている以上に、出版界についての情報や数字というのは公表されていないということかもしれない。私自身も、今回ネットで情報を検索してみて、出版界の情報や数字というのはネット上では、あまり公表されていないことを感じた。


18日のエントリでも書いたが、ニュースを発信する側である新聞社や出版社が、自社の事情や業界事情のマイナス面をあからさまに書かないというのも理解できるし、フリーの編集者やライターが自重して書かないのか(一部の業界で書かれている方はいるが)、お金にならない文は書かないということか、文章を書くことに長けている人が多いはずなのに、ほかの業界に比べると、よくも悪くもネット上で情報を発信している人が少ないように感じる(ネットへの対応度もあるかもしれないが)。


その一方で、業界関係者だけでなく、出版とか本とか書店などに関する情報について関心のある人というのが、思っていたよりも多いというのが、このブログをやってみて感じたことだ。


だから、ネットの脅威とか悪影響ばかりを言うのではなくて、出版業界自体(個人も会社も含めて)がネット上でも、もっとオープンに、情報を発信したり、広く問いかけたり、援助のようなものを呼びかけたりしてもいいのではないか。そのことによって、業界内ではどうにもならないことも、ひょんなことから解決し、何かが変わることもあると思うのだが。私自身のことは棚に上げて言うと、ネットに対する出版社を始めとする出版業界としてのアプローチというのは、ネットで実際に情報を発信したり共有したりしている人々からみると、的外れだったり、周回遅れだったりするのかもしれない。


エスクァイア日本版のバックナンバーを買ってきた


昨日は池袋に行く用事があったので、ジュンク堂書店池袋本店で、買おうかなと思っていた、昨年12月発売のエスクァイア日本版09年2月号を買ってきた。


特集のタイトルは「見せたい本棚の作り方。」で、私のような本好き、本屋さんマニアには眺めて楽しい、読んで楽しい特集だった。その前号の1月号も、「指揮者のチカラ。」というクラシック特集だったので、これもどうしようかと思ったが、次回にした(バックナンバーを常備している書店が全国にけっこうあるので、アマゾンで即買わないで、確認してみてください)。


Esquire (エスクァイア) 日本版 2009年 02月号 [雑誌]

Esquire (エスクァイア) 日本版 2009年 02月号 [雑誌]


最新号09年3月号の特集は「サーカスが、街にやってくる!」だが、2008年1年間の特集タイトルを挙げてみる。

  • 08年12月号:美しき日本の山々へ。
  • 08年11月号:ゆえに、カメラを愛す。
  • 08年10月号:SF再読。
  • 08年9月号:最強COOLスイーツを探せ。
  • 08年8月号:天才とスペイン
  • 08年7月号:秘境へ。
  • 08年6月号:実力派の新フレンチ。
  • 08年4月号:日本、ものづくり発見!
  • 08年3月号:ピアノ300年 音楽の真相。
  • 08年2月号:進化する、映画×リアリティ。
  • 08年1月号:京都の味、探訪。

という、ラインナップで、バラエティに富んだ、面白そうな特集が並んでいるが、売行きのほうはその特集によってだいぶ幅がありそうな感じだ。青山ブックセンターやリブロ、パルコ・ブックセンターのような書店が元気があった時代に、そのような書店では、売れる雑誌だったことが想像できる。


今回、エスクァイア日本版の20年間の歴史を調べてみようと思って、ホームページを見てみたが、具体的な変遷には言及していない上に、過去の歴史の部分も見れなくなっていた。また、ネット上でも、詳しい変遷が書かれているようなページはなかった。


創刊当初は季刊でスタートし、売行き好調のため、翌年から月刊化されたが、版元はユー・ピー・ユーという印刷関連の会社で、この会社の若き社長も話題になったと記憶している(追記:UPUはリクルートのような広告制作会社だったようだ)。


古きよきアメリカに憧れがまだあった時代の、音楽、映画、ファッションなどの記事をメインにした、おしゃれで洗練されたカルチャー雑誌で、それまでの雑誌に比べ判型も大きく、ビジュアルのデザインに凝った雑誌の先駆けで、ちょうど、いわゆる団塊の世代やその下の世代がメインの読者だったかと思う。ライバル誌に「GQ」があり、「PLAYBOY日本版」や「PENTHOUSE日本版」のアメリカ発のエンタテインメント誌も元気があった時代だ。


昨年11月に「PLAYBOY日本版」が休刊し、今年はそれに続いて、「エスクァイア日本版」が休刊するとすれば、経済でも文化でも日本の目標だったアメリカが、名実ともにその威信が失墜してきた流れの象徴ともいえるかもしれない。


また、最終頁を見ると、林聖編集長(社長)以下、編集者の名前は11名あり、特集や記事はほとんどライターが書き、豊富な写真もすべて撮りおろしているとすると、本誌もオールカラーでぜいたくなつくりなので、公称の発行部数が6万部(実際はもっと少ないはずだ)だと、広告が入っても定価700円では、相当キツイのではないかと推測できる。


最近の売行きはどうだったのかデータを探してみると、出版業界紙の「新文化」で毎月発表している「ジャンル別ベストマガジン」にその誌名を見つけることができた。


このランキングは毎月、文教堂グループ230店とブックファースト45店の集計結果が出ているのだが、12月発売誌(エスクァイア日本版は2月号)の集計で、男性誌部門の文教堂は掲載されている上位28位までに入っていないが、ブックファーストでは、691部で10位に入っている。


ちなみに1位は「BRUTUS」の1737部で、2位は「DIME」1335部、3位「日経TRENDY」1195部、以下「Tarzan」「サライ」「Bigin」「Pen」「特選街」「おとなの週末」に続く10位となっており、1店あたり平均15冊は売れていたわけで、立地や客層によっては売行きは悪くなかったようだ。


「GLAMOUR(グラマー)」創刊寸前での中止決定の衝撃


また、同じサイゾーウーマンの記事で報じられていた、今夏に創刊が予定されていた雑誌「GLAMOUR(グラマー)」の創刊中止の決定のほうが、業界的にはインパクトがあったかもしれない。


「GLAMOUR」は米国最大の出版社コンデナストが、アメリカをはじめイギリス、フランスなど世界12カ国で発行している雑誌で、アメリカでは約225万部の発行部数を誇っているという。


その日本版を発行することになっていた、コンデナスト・パブリケーションズ・ジャパンは「GLAMOUR」日本版の創刊に向けて、編集長に元「グラマラス」ファッションディレクターの軍地彩弓氏を迎え、プロジェクトを進め、すでに業界向けのパイロット版もつくられていたようだ。


このコンデナスト・パブリケーションズ・ジャパンは男性ファッション誌「GQ JAPAN」と女性ファッション誌「VOGUE NIPPON」を発行しており、社長の斎藤和弘氏は、赤字で休刊寸前だった「ブルータス」を編集長として人気雑誌に仕立て上げ、「カーサ・ブルータス」も成功させ、マガジンハウスを退社するときには大きなニュースなったほど、業界では有名な編集者だ。


この斎藤社長のブログを見ると、

1月13日(火)
お正月休みが終わったのに、また3連休でどうも調子が出ない。といっても年末からマーケットの冷え込みは想像以上。毎日ネガティブな話が入ってくる。こんな状態では、今年中に休刊する雑誌は数え切れないのではないか。ま、日本の雑誌マーケットはタイトル数が多すぎることもあるのだが。

1月16日(金)
午後、新雑誌のレヴァイスをチェックする。編集長の軍地と少々長話。創刊に向けて、着々と進んでいるので安心する。


というエントリでいったん途絶えているが、2月10日のエントリで、

2月10日(火)
午後、インターナショナルの決定で、新雑誌GLAMOURの創刊中止をスタッフに告げる。皆茫然自失。創刊までもう数ヶ月を残すところ、コンテンツをはじめ、発刊準備はほぼ完璧な状態まで来ていたので、言葉にならない喪失感


と、発刊準備が順調にすすんでいた段階での、突然の創刊中止に、スタッフが受けた衝撃の大きさと悔しさが感じられる。


あの斎藤氏が満を持して創刊準備をすすめていた、今年の目玉となるはずだった雑誌の創刊中止の決定というのは、斎藤氏もブログで触れているように、広告業界の冷え込みが、予想以上に厳しいことが伺え、ファッション誌業界およびファッション業界に与えたショックとダメージはかなり大きいといえそうだ。


「出版社別・年齢別の女性誌ラインナップ」と「女性誌のジャンル別の発行部数リスト」を現在製作中なので、近日中にアップしたいと思っている。


ほんとほんやさんのはなし関連バックナンバー

それでも雑誌は死なない!!:本格的なパーソナルメディアの時代の幕開けか


雑誌休刊のニュースが続き、雑誌の未来への不安ばかりを強調するかたちになってしまったが、昨年6月17日にエントリした記事「本と本屋さんの話:雑誌は決して死なない!! 生き残れる雑誌考1」で書いた思いは、出版界や雑誌業界を巡る状況がますます悪化してきた今でも変わっていない。


ネットやケータイがいくら普及しようとも、私自身はメディアとしての雑誌は永遠に不滅だと信じている。


くりかえしになるが、今、休刊や廃刊に追い込まれたり、存続が難しくなっている雑誌というのは、

  • はじめに広告クライアントありきの広告収入に依存した雑誌
  • ネットでも手に入ってしまう一次情報のカタログ誌
  • つくり手の高齢化により読者のニーズに応えられなくなった雑誌
  • 読者対象を年齢や大まかなテイストで切り、ターゲットがあいまいな雑誌
  • もともと赤字だった看板雑誌を、経営的にもささえられなくなったために休刊する雑誌
  • 雑誌が売れていた時代からの読者の変化に対応できなかった雑誌
  • 本体の雑誌はもともと赤字だったが、関連書籍やコミックスの収益で黒字だったものの収支が崩れた雑誌

などで、これはネットの影響が急激に増大したり、大きな不況の波が訪れていなくても、遅かれ早かれ、休刊を迎えていた雑誌だと考えられる。


たしかに、この未曾有の不況により、これまで以上に、雑誌の淘汰のスピードが加速度を増し、生き残りをかけたサバイバルゲームが激しくなってくることは間違いないだろう。


マス雑誌の時代は完全に終わり、10万部を超えない雑誌へ細分化


しかし、30万部、50万部以上の部数をあえて狙わず、ターゲットを絞り込み、内容もセグメントした雑誌で、発行部数も5万部〜10万部の雑誌、あるいは広告が入らなくても、3万部〜5万部なら、充分ビジネスとして成り立つ雑誌の可能性はまだまだあるはずだ(場合によっては1〜3万部でも可能だが、ビジュアル誌やコミック誌など、削れない最低の製作費があるものは別)。


かつて、いくつかのジャンルで100万部を超える雑誌があった時代のように、みんなが読んでいるからとか、読まないとみんなの話についていけないからと、雑誌を買う人はもういない。


逆にこれからは、30〜50万部以上売れる雑誌が残るとすれば、そのジャンルのトップだけで、その他はもっと小さく、細分化されていくのではないか。


このようなターゲットを絞り込んだ雑誌は、たとえ多くはなくても、ある一定の固定読者が見込めるフィールドで展開していくわけだから、大化けはしなくても、売り損じが少なく、部数の安定も見込め、リスクが少ない、ビジネスとして見れば堅実なものになるはずだ。


また、このような読者の顔が見える雑誌では、ナショナルクライアントのイメージ広告は見込めないが、その商品が必要な読者にピンポイントでアピールするような広告は入るようになるだろう。


個人の感覚と感性でつくる「パーソナルメディア」の時代へ


そして、このような雑誌は、大手も中小もない、つくり手に3万〜5万人の共感を得ることができる「個人(タレント)」がいるかどうか、3万〜5万人に有益な情報やその情報の読み解き方を伝えることができる「個人」がいるかどうかである。


さらに、従来のマーケティング的な手法やアンケートから導き出した、読者のニーズやウオンツに応えるのではなくて(思考過程や社内コンセンサスを得るために使ったとしても)、「これが面白い」、「この内容なら買う」と自分自身が感じる「肌感覚」のような感性で、メディアをつくれる「個人」を編集責任者にすえることができるか、そしてそれを会社として編集・販売面でバックアップできるかが、成功のカギとなるだろう。


私たちの情報誌世代も、それまでの世代に比べれば、情報というものの扱い方というものを知っている世代ではあるが、小学生のころからネットやケータイに親しみ、情報の海を自在に泳げる術を自然に身につけている世代が、数年後には、読者の多くを占めることになる。


「高度な消費脳」を持った世代に誰がどうアプローチしていくのか


また、この世代の子供たちは、あえて人とは違うものを志向したり、個性を主張したりというのとは違う、もっと自然なかたちで、自分の好きなものを自分の感覚で選り分けて、その価値を見極め、リーズナブルな価格で買うスキルを身につけている、いわば「高度な消費脳」を持った、今までに存在しなかった新しい世代だ。


このような世代に向けて、同じような感覚を持った個人が、自分の感覚で雑誌をつくるというと、雑誌が売れていた時代の、カリスマ性を持ったスター編集者や看板編集長が、個人の感覚や感性により雑誌のコンセプトを統一し、読者や時代をリードしていた時代に、再び立ち返るようなものだ。


ただ違っているのは、そのカリスマ編集長のメッセージで動く人数が昔は50万、100万単位でいたとしたら、今は多くて10万、せいぜい3万〜5万の人を動かせるにすぎない時代になったことだ。


もうすでに、コミックの世界ではコミケや「とらのあな」などのコミック専門店で、同人誌が多数流通し、既存の出版流通システムに頼らない、独自の販売ルートで独自のコンテンツを販売している事実は、ここで指摘するまでもない。
また、アプローチは少し違うが、個人でもPCを駆使することで、フリーペーパーやフリーマガジンといった、商業雑誌にも負けないメディアを立ち上げ、多数の固定読者にメッセージを確実に発信することが、以前よりは簡単にできる時代にもなっている。


しかし、このパーソナルメディアを確実に読者へ届けるためには、取次会社から全国の書店やCVSに広く、パターンに沿って配本する、現在の出版流通システムでは対応できないだろう。編集面だけでなく、販売面でも「個人」に対応する、小回りのきく販売ルートやシステムが必要になってくる。


ちょっとおおげさだが、この出版における「個人の時代」、「新しいパーソナルメディア」の誕生の可能性や問題点については、1回では書ききれないし、考えもまだ固まっていないので、今後、事例をあげながら、私なりに少しずつ書いていこうと思っている。


ほんとほんやさんのはなしバックナンバー